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- 著者インタビュー
- 保健・体育
ボール運動(ゲーム)には、学ぶべき要素がいっぱい詰まっています。それは、ボールの扱い方や身のこなしといった技能面、空間認知や学び方といった思考面はもちろんですが、それだけでありません。仲間を信じてパスを出す、チームのために練習する、仲間と共に勝敗に一喜一憂する、互いに教え合い、助け合う……。大げさではなく、人が人の中で生きていく上での大切なことも学ばせてくれるのではないでしょうか。
工夫と言えるか分かりませんが、次の2点を、ボール運動の授業をおこなう際に、まず考えます。
「その教材の一番の喜びは?」
「その教材での子どもたちの一番の願いは?」
言い換えると「ボール運動の魅力」です。「そんなの人それぞれ」って思うかもしれません。そこで、このように考えるようにしています。
「教師が何か説明する前に、子どもたちがこの運動(道具や場)にはじめて出会ったときに、自然とやり始めることはなんだろう」
それぞれのボール運動の特徴、また「喜び」「願い」を考えることがゲームを考えるスタートラインであり、道標であると考えています。
適当にゲームをさせておけば、教師の願う学びをすべての子どもたちに保証できるわけではありません。教材の特性を考慮し、子どもたちの事実をみつめ、子どもたちの小さな「できた」、小さな「わかった」、小さな「がんばり」を教師が見つけ、認めていくことが大切だと思っています。
一番のよさは、子どもたちの主体的な学びを促進することができることです。
技術を習得するためのコツや練習方法を載せることもいいでしょう。「あたま」を整理するために動きを図示することもいいでしょう。学習カードにより、子どもたちは学習を見通すことができます。
また、授業にのぞむにあたって、自分の目標、チームの目標を記すことで、その1時間の授業へ向かう気持ちがつくられます。
そして、振り返りにも活用することができます。自分の学びの軌跡を確かめる、次への学習にむけて修正をおこないます。次時への期待を高めることにつながります。
本書で紹介している実践は、関西体育授業研究会のメンバーが、これまで積み重ねてきた実践の数々です。1年生から6年生までの6年間の系統性を鑑みながら、ゴール型、ネット型、ベースボール型に分けて紹介しています。また、すべての子どもたちを主役にするためのしかけや方策も各教材において掲載しています。
本書が、そこに集うすべての子どもたちが授業における主役となり、授業の中できらきらと輝く姿を生み出すための一助となることを願っています。
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