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学力とは、習得するに留まらず、それらが様々な文脈の中で統合され、活用されたときに初めて、その必要性を実感したり、有用性に気付いたりするものです。そう考えると、学力は、各教科等の学習のみならず、実生活やこれからの社会の中で生きて働くものとなるような実効性や汎用性の高いものにしていくことが肝要です。「本当の学力」とは、「嘘でない事実としての学力」。言い換えると、「現前として確かにそこにある学力」と捉えたほうがいいかもしれません。学力を事実そこにあるものとして、客観として、可視化できるものとして捉えていくことが必要となると考えます。
本書では、全国学力・学習状況調査の報告書に基づく小学校国語の課題について、
- 「話すこと・聞くこと」
- 「書くこと」
- 「読むこと(説明的な文章)(文学的な文章)」
- 「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」
の三領域一事項に分けて洗い出し、更にそれらを学年に配列された指導事項や言語活動例との関連を図って整理しました。それらの課題をタイトルとして掲げ、教科書教材とリンクさせながら、その課題の解決を図る授業プランを3つのステップに分けた上で、特に中心的な指導場面について板書例やワークシートなども入れて具体化しました。
国語科の単元構想においては、知識や技能を習得し、それらを活用しながら課題を探究していくという、習得と活用の統合的な展開が求められています。実生活に生きて働く国語の能力の育成を図るには、個々の知識や技能を一つ一つ積み上げていくような発想ばかりではなく、言語活動を通した主体的な活用型の構成を単元全体として仕組むことで、知識や技能の獲得が複合して発揮されるように手だてを講じることが重要です。
「21世紀型能力」との関連を考えると、「基礎力」や「実践力」とを結び付ける「思考力」の育成がますます必要となります。このような点を踏まえ、本書では、「思考力」に焦点化した国語科の単元構成の留意点として、
- 意味ある問いで学びの文脈を創る
- 多様な考えを引き出し交流する
- 学びを自覚する機会を重視する
の3つを重要な観点として位置付けました。
学力向上は、永遠の課題です。特効薬もなければ、即効薬もありません。目の前の子どもたちの学力の状況、更にそれらを取り巻く学習状況などについて様々なとらえ方を工夫し、成果は更に向上させるとともに、課題については授業の中で一つ一つ改善していくことが期待されます。本書は、とりわけ課題に焦点化し、その改善策を具体的にまとめました。全国各地の国語教室において本書が役立てば幸いです。