- 著者インタビュー
これまでの物語・小説の授業は、子どもたちに作品を共感的に読ませることまではできていたかもしれません。しかし、それを通してどういう「国語力(読む力)」をつけるかという観点が弱かったのです。本書では、どうすれば物語・小説の授業で子どもたちに豊かな「国語力(読む力)」が身につくかを解明しました。物語・小説の新しい指導過程と、身につけさせる「国語力(読む力)」を具体的に示しました。
OECDのPISA(生徒の学習到達度調査)「読解力」問題は、日本の国語の授業に大きな影響を与えました。学力調査「B問題」ともつながります。言語の力、伏線・暗示などの工夫、そして批評を重視しています。とても先進的な内容です。しかし、PISA「読解力」にも弱さがあります。PISA「読解力」の良い点を取り入れつつ、不十分な点を克服することをめざして本書を書きました。
日本には通読→精読→味読という優れた指導過程があります。そこに最新の文学論や言語論を取り入れ、構造よみ→形象よみ→吟味よみという指導過程として再提案しました。全国の先生方との共同研究や学会での成果も生きています。構成やクライマックスを読む構造よみ、それを生かし作品の鍵を取り出し読み深める形象よみ、作品をどう味わったかを考える吟味よみです。国語嫌いの子どもも国語が好きになり、確実に力をつけることができるようになります。
物語・小説を「読む力」の中身が解明できていなかったことが最大の理由です。「気持ちの変化を読む」「登場人物の行動の意味を考える」といわれても、実際にどう読んだらいいかわかりません。もっと具体化する必要があります。またどういう手順(指導過程)で指導すれば効果的に「読む力」がつくかも未解明でした。「読む力」の具体と、それを身につけさせるための指導過程を新しく提案しました。
学年が上がるにつれて国語嫌いの子どもが増える傾向にあります。それは授業で本当に「読む力」がついているのかわからない、どうすれば「読む力」がつくのかわからない―ということが大きな原因です。本書はそれに正面から応えています。本書を生かして、子どもたちに確かで豊かな「読む力」をつけてほしいと思います。