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いじめの指導には時間がかかります。つまり、継続的な指導が必要です。
継続的な指導には、自分に合ったやり方が求められます。小学校編、中学校編それぞれ8人ずつの多様な実践が連なっています。まずは、自分が最も取り組めそうな実践を探してみてください。次は、それぞれの実践に共通することを探してみてください。それが、いじめ指導にはずしてはならないポイントです。そして、できましたら、小学校編、中学校編どちらもご覧いただきたく思います。いじめ指導には、個人技、チームプレーどちらも必要です。
小中の実践家がそれぞれの校種の強みで、効果的な指導の在り方を紹介しています。
いじめの指導・対策が、なかなか効果を発揮しないのは、そのほとんどが、大人や制度が「子どもたちに与える」構造になっているからです。大人や制度が、いくらいじめをしないように、あれこれ手を施そうと、心の子どもたちが育っていなくては、それらはうまく機能しません。
しかし、だからといって、それぞれの子ども個人に、「いじめに立ち向かいなさい」と言っても荷が重すぎます。いじめに対して、集団で立ち上がれるように子ども集団を育てるのです。
いじめは、いつ、誰がするのでしょうか。それは、大人のいないところで子どもたちがするのです。子どもたちの生活は、大人には見えない部分がたくさんあります。ネットの世界になってしまうと、ほぼお手上げです。
だからこそ、子どもたち自身が、いじめに対して抑止の行動をする「いじめに強い集団」を組織することが大切なのです。いじめ指導のゴールは、いじめをなくすことではありません。いじめに対して適切な判断と行動ができる子どもたちを育てることです。
そうした子どもたちは、いじめに強い集団の中で育ちます。
予防の原則は、まずは、教師と子どもとの一対一の個人的信頼関係をつくるためにどれくらい本気になれるかと言うことです。これは集団づくりの鉄則とも言えます。教師との信頼関係を構築することは、教師の指導性を高め、いざ、いじめが起こったときの指導の可能性を高めます。
また、教師との安定した人間関係は、子どもたちのストレスを軽減します。逆に言うと、教師との希薄な関係は子どもたちにとってストレスになりますから、いじめなどの問題行動の発生確率を高めます。子どもたちとの個人的信頼関係の形成は、集団づくりの鉄則であり、いじめ予防の要です。
教師がどんなに予防を一生懸命にやっていても、いじめは起こるときには起こります。だからこそ、早期発見、早期対応です。傷が浅いうちならば治りも早いわけです。深刻ないじめにおいて、それを教育のチャンスにするといった悠長なことは言ってられません。
しかし、早期のいじめならば、子どもたちの力で対応可能です。教師がやらねばならないことをした後には、加害者と被害者だけの問題にしないで、集団の問題として子どもたちに投げかけ、同様のことが起こらないように次のアクションを考えさせるようにしたいものです。
人の自己実現には、人間関係の中で起こる課題にうまく対応していく力が必要です。なぜならば、私たちは、私たちの喜びや悩みは人間関係を無縁でいることはできないからです。そのためには、他者を信頼する能力、他者に貢献する能力そして、自分を信頼する能力が大切だと考えています。この三つの能力をまとめて言えば「共感性」です。
人の痛みや喜びがわかる子どもに育てることが、最も大切だと考えています。
残念ながら、また、悲しい事件が起こってしまいました。学校教育において、もっとも優先しなくてならないことはなんでしょうか。
まず、子どもたちの生命の安全を守ることではないでしょうか。
いじめ指導は、学校教育において最優先で取り組まなくてはならないことだと思いませんか。
本気で、いじめをなくそう、減らそうと思うならば、子どもたちにいじめに立ち向かう力を育てなくてはなりません。いじめに立ち向かう力を育てることが出来るのは、いじめを教育の機会として子どもたちを向き合わせることができる教師です。本書は、いじめに強いクラスをつくるいじめに強い教師になるための一冊です。