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既刊の拙著『実践ナビ!言語活動のススメ モデル30』では、国語科学習指導において言語活動を通して指導事項を指導することが求められている中、小学校学習指導要領国語「読むこと」の言語活動例を中心に取り上げ、その言語活動のもつ特徴やそれを遂行していく手順や方法、指導のポイントなどをモデルとして30事例にまとめました。
前著は、教師自身が学習指導要領国語に例示された言語活動そのものを実際に行った経験が少ないという現状を踏まえての刊行でありました。教師自身が言語活動のグッドモデルを十分にイメージできないために、単元を貫く言語活動を設定した授業を行っても、指導事項との関係付けが今ひとつしっくりいかないといった現場の悩みに応えることを意図しました。
今回は、その続編です。続編の趣旨を簡潔に述べますと、読むことの教科書教材における言語活動の設定の可能性を広げることにあります。前著で示したモデル30を実際に教科書教材に用いた場合、どのような授業展開になるかを具体的にしたかったのです。
現在、言語活動を通して指導事項を指導することを眼目とする国語科学習指導において、新たな課題も散見されるようになりました。それは、「読むこと」の授業において、単元を貫く言語活動は設定されているものの、教材の特性や指導事項の系統を十分に踏まえた言語活動になり得ていないという課題です。
極端に言うと、どの学年でも、どの教材を取り扱っても、あまり変化のない、同じような言語活動の完成形に陥るということです。第三次に同じような表現活動を繰り返す、あるいは似たような表現物を制作するといったような事例が典型的です。
例えば、定番の文学的な文章である「おおきなかぶ」の指導も、「お手紙」の指導も並行読書をし、第三次には読んだ本の中から好きな作品を選んで音読発表や本の紹介カードを作るといった言語活動です。説明的な文章の指導であれば、新聞やリーフレットに同じような枠付けで読んだ内容をまとめ、それを交流するような言語活動です。
言語活動に何か出来合いの物を求め過ぎているような感が拭えません。
本書では、教科書教材の特性の確かな分析の上に立ち、身に付けようとする能力の到達や達成を図るために、言語活動を効果的に設定する重要性を主張するものであります。具体的には、一つの教科書教材において、複数の言語活動を設定した授業プランを示します。
各学校や各学級においては、年間の見通しの中で、身に付けたい能力を第一義とし、児童の実態に応じて、言語活動は設定できます。まずは、小学校学習指導要領国語解説編に例示されている言語活動を中心にしてアレンジしてみてください。拙著『実践ナビ!言語活動のススメ モデル30』も参考にしてください。
本書では、児童が言語活動を遂行していく中で、具体的な活動の姿が分かるように、多くの言語活動のモデルを示しています。第三次におけるまとまった言語活動のゴールイメージが明確になるように、そのモデルを大いに参考にしていただくとともに、思考力や判断力を育むワークシートやカードなども参考になるのでコピーして活用してください。
第三次がとかく児童主体の活動に終始し、教師自身の働きかけが不十分な様子が散見されます。そのために、「教師がすべきこと」を明記しました。それぞれの児童の個人評価や相互評価を重視しながら、「この学習を通して、どんな力が身に付いたか」という点から児童が主体的かつ総括的に評価することが大切です。
そのためには、この学習以前に何を知識や技能として習得してきたのか、それらをどのように活用すればよいかなどについて自覚できるように、教師は働きかけを強化する必要があります。児童に身に付けた能力を累積できるような仕掛けが大切です。
言語活動を通した国語科学習指導が、「活動あって能力なし」「楽しさあって学びなし」と揶揄されないようにしなければなりません。単元を貫く言語活動を設定した国語科学習指導の質を向上させるには、教材の特性及び指導事項の系統を捉えるとともに、前著において主張したように言語活動そのものの特徴を十分に把握することが重要です。そして、それら三者を有機的に関連付けながら、単元全体を構想することが必要です。
「教材を教える」のではなく、「教材で教える」ことは周知のとおりですが、いずれも教材の特性をないがしろにしてはなりません。また、言語活動そのものは手段であるとされていますが、手段を軽視してはなりません。言語活動のもつ特徴を捉え、その言語活動を遂行する質的、能力的な面や、活動に要する時間等の量的な面などを総合的に判断することにより、単元を貫く言語活動を具体的にデザインすることができます。
時代の要請を踏まえて刊行した本書が、先生方の日々の授業改善に少しでもお役に立てば幸いです。