著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ちょっとした課題と発問の工夫で、理科授業は大きく変わる
東京都品川区立小中一貫校八潮学園校長山口 晃弘
2015/9/25 掲載
 今回は山口晃弘先生に、新刊『中学校理科 授業を変える課題提示と発問の工夫50』について伺いました。

山口 晃弘やまぐち あきひろ

品川区立小中一貫校八潮学園校長
1961年福岡県生まれ。
1984年東京学芸大学教育学部初等教育学科理科専修卒業。
1984年理科担当教諭として,都内の公立学校に勤務。
1993年東京都教育研究員(中学校理科)。
1995年都立教育研究所教員研究生。
2005年中央教育審議会理科専門部会の専門委員を兼務。
2015年東京都中学校理科教育研究会事務局長。

―山口先生は、本書において生徒の能動的な学習を重視されています。例えば、観察において、生徒に能動的な学習を促すような課題の工夫の仕方があれば教えてください。

 生徒自らのアイデアを生かすようにします。
 最初に「水中の微小生物を観察しよう」「種子植物の花のしくみを調べよう」といった程度の大まかな課題を提示します。これは、生徒全員に一斉に示します。
 そして、いくつかの候補の生物のうちから生徒がスケッチする植物を選択させます。さらに、観察を進める中で、細かくスケッチをする対象を絞り込ませます。おしべのスケッチをしている生徒のとなりで、がくのスケッチをしている生徒がいるというような状況になります。教師は、観察を開始したら机間指導を繰り返し、かきかけのスケッチを確認しながら小まめに声をかけます。
 生徒からすれば、自分が選んだ対象を自分だけがスケッチすることになるので学習意欲が高まります。ちょっとした生徒の提案やアイデアが授業で積極的に取り上げられていくと、生徒の自己効力感が増し、能動的な学習姿勢が高まります。
 注意したいのは、観察可能な課題をいくつか示して「できる人は全部やろう」としたり、分担として割り振ったりしないことです。教師が観察対象を指定するのではなかなか意欲は高まりません。

―中学校の理科授業では、顕微鏡やガスバーナーなど、様々な観察・実験器具を使います。そういった器具の操作技能を確実に身につけさせるための課題や発問の工夫を教えてください。

 観察・実験器具の基本操作に習熟するためには、訓練が不可欠です。正しく取り扱うことができるようになるまで、教師はためらうことなく指導を繰り返しましょう。
 その訓練の中に、本書の「顕微鏡の使い方を相互評価しよう」(課題)の事例のように協働性のある学びを導入したり、また「ガスバーナーを分解しても火がつくでしょうか?」(発問)の事例のように意外な現象や事象を演示したりすることが考えられます。

―中学校の理科では、たくさんの新しい用語が出てきます。用語を覚えることに苦手意識をもつ生徒は少なくないと思いますが、よい方法(課題)はないでしょうか?

 単に用語を知っているというだけではなく、そこから一歩進んで用語を活用させる課題を提示します。具体的には、用語の関連を図解させたり、用語を使って文章をつくらせたりするのが効果的です。
 それだけでなく、知識の関連づけやまとまりを問う形式の課題や発問を意識すると授業の深まりが増します。例えば、「物質・分子・原子という3つの語句を使って、文をつくりなさい」という課題では、それぞれの語句がもっている概念をとらえ、それを階層化することが要求されます。
 学習のまとまりごとのテストや定期テストでもこのことを意識とするとよいでしょう。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 最近やってみて、意外なほど生徒の反応がよかった授業があります。それは、レーザーポインタを使って、プラネタリウムと同じように実天の星を指し示して解説する授業です。林間学校のキャンプファイヤーの後に行ったこの授業は、ダイナミックで、生徒からも教員からも、「楽しい」「わかりやすい」と好評でした。
 本書が課題や発問を磨く一助になり、毎日の授業でも生徒からこんな素朴な反応が得られるようになれば幸いです。

(構成:矢口)
コメントの受付は終了しました。