著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
楽譜が読めると音楽の世界が一気に広がる!
国立音楽大学准教授今村 央子ほか
2015/10/23 掲載

今村 央子いまむら ひさこ

1966年千葉県に生まれる。東京藝術大学作曲科、同大学院ソルフェージュ科修了。1992年伊藤国際教育交流財団の奨学金を得て渡仏。パリ国立高等音楽院にて和声科、対位法科、フーガと形式科を審査員全員一致の一等賞、ピアノ伴奏科を審査員全員一致の二等賞を得て卒業。1997年に帰国後は、自作初演を含むピアノ・リサイタルやレクチャーコンサート等の開催、作編曲、雑誌連載、新作初演等、作曲家兼ピアニストとして幅広く活動を展開している。現在国立音楽大学准教授、日本ソルフェージュ研究協議会理事。
著書に『楽しくつくるアイデア満載!「音楽づくり」成功の授業プラン』『表現力アップの仕掛けが満載!「創作」成功の授業プラン』(何れも共著、明治図書)などがある。

酒井 美恵子さかい みえこ

国立音楽大学音楽学部器楽学科ピアノ専攻卒業。東京都の公立中学校の音楽科教諭及び指導主事を経て現在、国立音楽大学准教授。日本音楽教育学会、日本学校音楽教育実践学会などに所属。
論文・著作等として「J-POPを合奏教材とした一事例」(音楽教育実践ジャーナル通巻9号、日本音楽教育学会)、『中学校音楽科新学習指導要領ガイドブック』(共著、教育芸術社)、『中学校新学習指導要領の展開 音楽科編』(共著、明治図書)、『初任者研修実務必携』(編著、第一法規)、『中学音楽が魅力的に変わる!授業プランの新モデル24 第1学年編』『同 新モデル30 第2・3学年編』(何れも編著、明治図書)、『動いてノッて子どもも熱中!リトミックでつくる楽しい音楽授業』『楽しくつくるアイデア満載!「音楽づくり」成功の授業プラン』『表現力アップの仕掛けが満載!「創作」成功の授業プラン』『プロの演奏でつくる!日本・アジアの伝統音楽(何れも共著、明治図書)、『小学校音楽「魔法の5分間」アクティビティ』(編著、明治図書)などがある。

―楽譜が読めるようになると、音楽の世界がどのように変わりますか?

 たとえば、読書を考えてみましょう。読み聞かせで絵本や童話で親しんで、本に興味をもった子どもが、文字を読めるようになることで自ら読書をして世界を広げていくことができます。音楽でも、楽譜を読めるということは、好きな音楽を自ら進んで読んで歌ったり楽器で演奏したりすることにつながります。また、お友達と一緒に楽譜をもとに、合唱したり合奏したりすることはとても楽しいことです。楽譜が読めるようになることは、音楽の楽しみが大きく広がります。

―本書では、体を動かしたり、リコーダーを使ったり、共通教材を活用したり、様々な活動が紹介されていますね。授業の中でどのように取り入れるとよいでしょうか。

 音や音楽の楽しさとともに、無理なく楽譜に親しんでほしいと考え、いろいろな活動とともに読譜力や記譜力が高まるように構成しました。学年別に例示していますが、児童の実態に応じて、自由にアレンジして授業に生かしてください。たとえば、高学年の児童に中学年で紹介したドレミファソを使って2小節の音楽をつくって記譜する活動を行ってから、高学年で紹介している音楽づくりと関連させた活動につなげるとうまくいきます。

―これまで、耳で聴いたもので覚えて楽譜を読まずにすませてしまっていた、という先生方もいらっしゃるかと思います。楽譜を見たら、まずは最低限ここだけはチェックすべき、という点を教えてください。

 まずは、曲を聴くときに楽譜を見てみましょう。旋律をなぞって音の高低を実感しながら楽譜に親しんでください。その次に、何拍子の曲であるか、速さはどのくらいに指示されているか、使われている音符や休符は何があるかを確認しましょう。「聴きながら読む」「読みながら聴く」「歌いながら読む」「読みながら歌う」を繰り返すと楽譜が身近に感じられるでしょう。「写譜」もおすすめです。お好きな曲を写してみましょう。いろいろな記号の意味合いが一気に理解できます。

―高学年で、楽譜を読める子どもと読めない子どもの差が激しいとき、指導の工夫をぜひ教えて頂けますか。

 2つめの質問でも触れましたが、ワークシートに取り組みやすい下の学年のものと高学年向けのものを取り入れて、読める経験を増やすというのはいかがでしょうか。また、ワークシートの大きさでも取り組みやすさが違います。思い切ってA3判くらいに拡大したものとA4判にしたものを用意して、児童にやりやすい方を選ばせてもよいと思います。そして、鍵盤楽器や弦楽器を習っている児童は圧倒的に読譜力・記譜力が高いことでしょう。その児童たちを「リトル・ティーチャー」として、グループの中で教える役割を担ってもらうという方法がありますね。

―最後に、音楽授業を受けもつことになった学級担任の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 この本は、出会った小学校の先生や保護者の方の、「子どもたちが楽しみながら、楽譜が読めるようになる本がほしい」という声を受けてつくりました。はじめて音楽を受けもつ学級担任の先生に使いやすいよう心掛けましたので、音楽が苦手な先生も安心してお使いください。

(構成:木村)
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