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私の場合は誠実に対応するということでしょうか。保護者との人間関係を深めるということを考えると、より親しくフレンドリーな対応を心掛けることが大事だと考える先生もいらっしゃると思います。これはそれぞれの先生の性格や得意分野などによるのではないかと思います。大事なのは、その先生の強みが最も発揮される部分を有効に活用して関係をつくっていくことかなと思います。
おそらく、どのタイプの保護者にも通じる基本の対応はないのではないかと思います。もしあるとすれば、ごく一般的な対応になっていくのではないでしょうか。まず話をじっくりと聞く、心情は受容し要求は許容しない、事実と思いをはっきりと分ける等々、クレーム対応本にあるような基本対応になると思います。
それよりも私が思うのは、実はクレームというクレームは非常に少ないのではないかということです。多くの場合、理不尽と思える要求も我が子かわいさから発していたり、自分の満たされない思いをぶつける場所がなく保護者自身も悩んでいたり、学校からの情報が少なかったりきちんと伝わっていなかったり、そういうことなのではないかと思います。そういうことを考えれば、全てのタイプの保護者に通じることは、教育の専門職として、今述べたようなことを念頭に置いたマインドセットで臨むということなのかもしれません。
保護者の立場からすれば、1つは、全体の傾向だけではなく、我が子についての情報も知ることができるということだと思います。保護者会ではよく、学年や学級の全体的な傾向が話されます。しかし、はっきり言えば保護者としてはそういうことにあまり関心はないと言えます。それよりも我が子はどうなのか、ある程度そういうことが分かると嬉しいものです。
また、困りごとがあればそれが解決できる、解決できないまでも、解決の方向性を知ることができるというのもありがたいことです。事前に保護者の関心や困りごと、問題点などを把握して、関連する情報を提供するのもよいと思います。
それから、子育てや進路、学力向上の具体策など、どの保護者も一般的に気になることについて、最新の情報や有効な情報を分かりやすく伝えるのもよいのではないでしょうか。
これはもう、読んでいただいて試していただくのが一番です。それぞれの実践はその場面でしか通用しないものもありますが、別の場面でも効果が期待できるものもあります。他の場面がひらめいたらそれもまたぜひ試してみられることをお勧めします。
本書には実物の資料を多めに入れました。実物の資料はそのまま使えるというよさもありますが、それ以上に発想のヒントになるという効果が期待できます。先生方はみなさんそれぞれのご経験がおありですので、実物の資料を見ることで、自分の記憶や体験と融合したり反応したりして、新しい実践がひらめくのではないでしょうか。
実際には、心ない保護者の言葉に深く傷つくことも多いと思います。教師は職場の同僚との人間関係、児童生徒との人間関係、児童生徒の保護者との人間関係、地域住民との人間関係と、いろんな人間関係の中で感情をすり減らす、まさに感情労働者です。
少しでもダメージを軽減する方法を心得ておくとよいと思います。「世の中にはそういう人もいるものだ」と受け入れるのも方法の1つです。受け入れないといつまでもわだかまりが残ってしまいます。また、人は一般に99人が肯定しても、1人が否定するとそれが気になるものです。冷静に判断すればそのことの不合理さは明白です。
そのような方法をいくつか手に入れて、少しでも打たれ強くなりましょう。その上で、保護者とよい人間関係をつくり、保護者を味方にすることができれば、最高のクラスをつくることができます。保護者とよい関係をつくるのは、結局は子供のためです。
本書を有効に役立て、よい学級をつくり、よい子供たちを育ててください。