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副校長・教頭は、校長の補佐役です。校長と副校長・教頭の2人が強い信頼関係で同じ判断、同じ行動をすることで、教職員も安心して実践ができると考えます。
そのために、私は自ら求めて校長と対話することを心掛けています。
よく話す校長でも、静かな校長であっても、一番話す相手は副校長・教頭です。日常的な対話の中から校長の考えを理解しようとしていくことが大切です。そして、補佐役として、自分が得た情報はどんどん校長に報告しています。
その際、常に「提案」を意識しています。例えば、校長が前日出張で不在だった折に生徒指導上の問題が起きた場合には、その事実報告だけではなく、副校長としてどのような考えでどのような対応を指示したか話をします。その「考え」自体が、自分の対応の提案となります。
さらに、今後の予防策を提案できたら、それに対する校長の判断を仰ぐことにもなります。それは校長の考えを深く知ることにもなっています。
職員室での私の席は、職員室全体を見渡せる場所にあります。いわば「センター」です。教職員の先生方の情報が入りやすいポジションです。
センターに座っているわけですから、副校長として情報が流れるしくみを自ら止めてはいけないと考えています。例えば、休み時間に先生方が職員室に戻ってきたときには、集中しているパソコンの画面から目を離して全体を見渡したり、困っているような雰囲気の学年があったら、こちらからそばに行って話しかけたりします。このようにして、「話がしやすい」と思われるようになることを意識しています。
また、教職員や学級のことを知り、管理職としての自分の考えや思いを伝えるために、「まじめな雑談」は大切なツールです。そこから信頼関係が芽生える場合もあります。例えば、子どもたちのよい点や、廊下巡視でたまたま見えた授業のことなどで、さりげなく自分の子ども観や授業観を伝えることができます。ちょっとした部分からの雑談へのアクションが、教職員とのコミュニケーションを深めると感じています。
副校長・教頭となれば、保護者との距離も担任時代とは変わってきます。
まず、担任している子の保護者がいません。これは、逆に言えば、保護者全員と平等に接することが必要ということです。
その際私が気をつけていることは、「保護者を覚える」ことと「敬意をもって接する」ことです。
当たり前のことですが、保護者にとっては自分のことを副校長が覚えている方が覚えていないよりもうれしいものです。特に、特別な配慮が必要な子どもの保護者はしっかり覚えて、お会いしたときには可能な限り声をかけるようにしています。学校全体でその子を見守っているはずですから、管理職が声をかけるのはその姿勢を表すことにもつながります。
敬意をもって接するというのは、ごくごく当たり前のことです。副校長・教頭になると、保護者は「管理職」ということで担任とは違った見方をします。時には「担任の先生が厳しく怒るため、学校に行くのを嫌がっています」といった担任に話しづらいようなことを言われる場合があります。そのような場合、保護者に対して管理職として対応する必要も出てきます。そのときに敬意をもっているのとそうでないのとでは、保護者の学校の姿勢の受け取り方も違ってきます。保護者の言い分を敬意をもって聞くのも、大事な管理職の仕事です。
地域について言うと、副校長・教頭は「地域を回る営業部長」のようなものと考えています。
「地域は学校の応援団」と言われます。勤務校では、子どもたちの登下校の安全を守る「見守り隊」が、毎日要所に立って、交通安全指導や不審者対策をしてくださっています。ほとんどは、60代から70代の方々のボランティアです。寒い冬でも、子どもたちのために1時間以上も雪の中を立ってくださっています。
当たり前ですが、私たち学校関係者から感謝の気持ちを伝えなければいけません。ときどき地域を回って「毎日ありがとうございます」と直接感謝の気持ちを述べたり、校内で「感謝の会」を企画したりすることが、管理職としての重要な役目です。
6年生の子どもから卒業する際に、「副校長先生はいつも明るかったです。まるで太陽のようでした」と色紙に書かれたことがありました。ときどきその学級に補欠授業に入って一緒に笑ったことや、職員室の対応のときに励ましたことが印象に残っていたのでしょう。
この子のメッセージから気づいたことがあります。それは、「副校長・教頭は職員室を照らし続ける太陽のような存在。明るくし続けることが大切」ということです。
担任の先生方は、どちらかといえば太陽の光を浴びる存在です。しかし、管理職になるということは、先生方を笑顔で励まし、その活躍に光を注ぐ存在になるということです。そして、そのことを喜べる管理職でありたいものです。
今、管理職のなり手が少ない地域もあると聞きます。管理職には管理職の楽しみ、やりがいがあります。そのことを管理職の皆さんはもちろん、やがて学校のリーダーとなる次世代の皆さんにも、この本から感じ取っていただければ幸いです。