- 著者インタビュー
- 道徳
道徳を教科化する上で、画一的な指導方法をいかに抜本的に改善するかが大きな課題でした。そこで、登場人物の心情を理解することに偏った従来の指導方法から、道徳上の問題を考え議論する問題解決的な学習へと質的転換をすることが求められたのです。この指導方法は、子どもたちが道徳上の問題に主体的かつ能動的に取り組み、協働的に話し合うため、アクティブ・ラーニングに対応しており、世界標準の授業になります。
道徳科における問題解決的な学習とは、子どもが生きる上で出会う様々な道徳上の問題や課題を多面的・多角的に考え、主体的に判断・実行し、よりよく生きていくための資質・能力を養う学習です。従来の道徳授業は、道徳的価値を自覚させることに重点をおいたコンテンツ・ベースの授業でしたが、道徳科における問題解決的な学習は、子どもが道徳上の問題を解決する資質・能力を養うことに重点をおくコンピテンシー・ベースの授業になります。
「はしのうえのおおかみ」は、ただ相手に親切にすればよいという単純な話ではありません。一本橋で双方から渡ってきた場合、どうすればよいかを具体的に話し合うことが大事になります。例えば、@自分だけ傲慢に渡る案、A卑屈に相手に譲る案、B両方とも渡れるようにする案などを比較検討し、それぞれの結果もふまえて最善策を判断すればよいのです。そこで習得した問題解決の知恵や技能は、子どもの日常生活でも活用できます。
道徳科の特質とは、よりよく生きるための資質・能力となる道徳性を養うことです。従来の道徳授業では、登場人物の心情を理解させ、ねらいとする道徳的価値を自覚させることが特質であると考えてきました。しかし、道徳科では、道徳的諸価値の理解をもとに、道徳上の問題を解決する資質・能力を育むことが特質なのです。子どもがよりよく生きる力を育むためには、過去の言動を追及するのではなく、将来の生き方を追求すべきなのです。
道徳科の趣旨や目標をご理解の上で、ぜひ問題解決的な学習にチャレンジしていただきたいです。子どもたちは、人生の諸問題に真摯に向き合い、「何が課題なのか」「どうしたらよいのか」を切実に考え、熱心に話し合います。そして、授業で学び考えたことを自分の人生に生かしていこうとします。こうして子どもたちが主体的に考え判断し、意欲的に行動し、よりよく成長していく姿を認め、励まし、勇気づけていきたいものです。