著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
もうワンステップ、国語の授業を高めたい先生へ
追手門学院小学校講師多賀 一郎
2016/1/20 掲載
 今回は多賀一郎先生に、新刊『国語教師力を鍛える―授業づくりステップアップの理論×方法―』について伺いました。

多賀 一郎たが いちろう

 神戸大学教育学部卒。附属住吉小学校を経て、私立小学校に31年間勤める。現在、私立追手門学院小学校講師。元日本私立小学校連合国語部全国委員長。専門は国語教育。「親塾」を開催して、保護者の子育て支援を行ったり、若い教師の育成に尽力したりしている。また、公立私立での指導・講演、幼稚園やサークルなどで絵本の話をしている。
 著書に、『クラスを育てる「作文教育」 書くことで伸びる学級力』『学級づくりロケットスタート』『学級担任のための「伝わる」話し方』『ヒドゥンカリキュラム入門―学級崩壊を防ぐ見えない教育力―』『学級づくり・授業づくりがうまくいく!プロ教師だけが知っている50の秘訣』『はじめての学級担任4 1から学べる!成功する授業づくり』『小学校国語科授業アシスト これであなたもマイスター!国語発問づくり10のルール』(以上、明治図書)、『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『今どきの子どもはこう受け止めるんやで!』『一冊の本が学級を変える』堀裕嗣との共著『国語科授業づくりの深層』『学級づくりの深層』(以上、黎明書房)など多数。

―本書は、「国語の授業がうまくいかない」「もう一段階、ステップアップしたい」と考える先生に向けた本ですね。具体的には、どんなことで悩んでいらっしゃっていて、多賀先生はどのようにアドバイスをされていらっしゃるのでしょうか。

 「これで国語の授業なのかな?」ということが、最大の悩みです。具体的な国語の授業のイメージがわかないのです。だから、最近は公立小での指導で投げ込み授業をして、国語の授業のイメージを持ってもらうようにしています。

―最初の章で、「言語活動」や「アクティブ・ラーニング(AL)」について触れていただいています。このような、指導要領の改訂に合わせて注目される語について、先生のお考えをお聞かせください。

 この本には、言語活動は単元を貫かなくてもできるということを書いています。これまで、「単元を貫く…」のもとに、型だけで、国語の中身の空っぽな実践が並びました。文科省の現場を混乱させた責任は重いです。たくさんの先生方から相談されましたからね、単元を貫かないといけませんかって。
 言葉の授業だという原点に立てば、授業が見えてくると思っています。
 ALについては、これまでにやってきたことの踏襲でいけるという発想は気を付けないといけません。何十年も改革してこなかったことを、根本的に改革しようという流れです。ビッグバンだと思っています。

―国語授業の取り組みの一環として、「国語通信」を出されることを薦めていらっしゃいますね。これから取り組む先生は、どんなことに気を付けて発行したらよいでしょうか。

 おうちの方も知らないことが国語には多いものです。専門家として、おうちの方に何かヒントを出しましょう。
 国語では、子どもの作品がたくさん生まれます。感想や俳句など、子どもの個性がきらめくものを通信で示すのです。
 授業での子どもの姿を示します。そこには、子どもたちのがんばる姿があります。それに、おうちの方も励まされるものです。

―終章では、国語科における「ヒドゥンカリキュラム」を10点挙げていただきました。あらためて…ですが、「ヒドゥンカリキュラム」について教えてください。

 「ヒドゥンカリキュラム」は、学校教育の用語に限られたものではありません。「潜在的教育効果」のことで、学校のみならず社会や家庭においても考えておかねばならないことです。優れた実践家の真似をしてうまくいかなかったと言う話をよく聞きます。それは、自分のヒドゥンカリキュラムを考えていないからです。
 国語に限定して言うと、教師自身が言葉の力を持っているかどうかが一番大きなヒドゥンカリキュラムになるでしょう。

―最後に、授業づくりをステップアップしたいと考える読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 地道に辞典を引いて語彙を増やしたり、自ら音読練習したりして、少しずつ力をつけていってほしいと思います。国語は言葉の学習です。一朝一夕には、教師の力はつきません。言葉の学びに王道などないのです。こつこつと積み上げていってほしいと思います。

(構成:林)
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