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1章では、新しい時代において、国語科でどのような力が育成されるべきなのかを紹介しています。これまでの授業と比べながら、新しい課題解決的な国語科の授業がどうあればよいのかを、具体的にイメージできます。アクティブ・ラーニングの授業づくり、課題解決的な国語科の単元づくりの方向性を定める際に活用していただければと思います。
まず、凝縮シート(GS)についてですが、従来は、指導案検討と言えば、ほぼ完成した指導案を検討し、そこでいただいた様々な意見を反映させながら大幅に書き直していく、あるいは全て書き換える、などということが多かったように思います。GSは、そうした労力を軽減するために、単元づくりの三要素「身に付けたい力」「言語活動」「教材」とのマッチングを中心に検討するためにつくられたものです。GSで方向性を定めた後、それを授業レベルに落とした指導案を書いていくのです。
次に、教材分析シート(BS)についてですが、従来は、教材分析と言えば主として「教材文の分析」だったのではないでしょうか。しかし、言語活動を通して授業づくりを行うときに、それだけでは不足します。教材文はもちろん、ワークシート、並行読書作品、課題意識のもたせ方、言語活動の具体など、授業を形づくる全てを対象として分析し、単元で行う学習のイメージをより明確にしていくのです。授業者は、自身のイメージの明確化のために使っています。
並木中央小学校では、常にその単元が「課題解決的な学習になっているか」「課題解決の過程をとっているか」を念入りに検討しています。課題が子供にとって本物にならなければ、主体的に子供が言葉に関わっていくことなどができるはずがありません。教科書を開かせ、「今日からこの単元をやりますね。」というような導入は、どのクラスでもしていません。0次や導入は特に大切にしています。
しかし、大切にしているのは単元の入り口だけではありません。教師は、途中の経過から出口に至るまで、自分たちの手立てが本当に子供自身の課題解決に必要なものなのか考えます。子供が目的を自覚していること、学習活動が子供一人一人の課題解決にとって必要あるものなのかを吟味し、手立ての工夫をしています。
国語科の授業を中心に、学校教育の様々な場面において「確かな言葉の力を身に付ける」よう工夫を凝らしています。
たとえば、全校の前で感想を言ったり発表したりする機会をなるべく多くし、その際にはしっかりと指導をしてスピーチさせたり、グループでの課題解決の場面を国語科のみならず全ての教科でつくったりするなど、国語科での指導はあくまで言葉の力を身に付ける中心的存在であると位置付け、学校生活の様々な場面で言葉の指導をしています。
それらの学校生活全体の総合的な取組によって子供自身が主体的に言葉に関わる力が付いていくものと考えています。
また、本書でも紹介していますが、各学級においては「学級暦」を作成し、年間を通してバランス良く力を付けていけるようにするとともに、各教科や行事との関連も考えながら力を付けられるようにしています。
最も授業時数の多い国語科の授業が楽しく有意義なものになることは、子供たちが楽しく学校に通ってくることにつながります。また、子供自身の課題意識や主体性を大切に考えるアクティブ・ラーニングの実現を目指すことは、楽しく有意義な国語科の授業をつくっていくことに他なりません。
新しい時代を生きる子供たちに必要な言葉の力を付けていくための国語科の授業改善のヒントを、本書からひとつでも見付けていただければ幸いです。