- 著者インタビュー
- 学級経営
自治的集団は、メンバーの主体性によって組織された高度な機能を持つ集団です。主体的で協働的な学び、つまり、アクティブ・ラーニングを実現しようと思ったら、学級の機能を高める必要があることは自明のことです。
その実現は難しそうに思えるかもしれませんが、やっている人はやっている、そして、成功している人は成功している。自治的集団を実現したら、教師の仕事はもっともっと楽しくなります。教師の想定を越えるパフォーマンスを見せる子どもたちの姿に圧倒されることでしょう。そんな夢のような集団の実現のための基本的な考え方と実践を示しました。
子どもの幸福感を高めることです。これまでの学校教育は、世界最高水準の学力を長期間維持して来たと言っていいでしょう。しかし、一方で、主体的に学ぶ態度を育ててきたかというと首を傾げざるを得ない状況です。きついいい方をすれば子どもたちの素直さ、勤勉さに胡座をかいて、学習内容を教えることに一生懸命になりすぎ、子どもたちの意欲を育てることに無頓着だったと言わざるを得ません。
子どもたちの意欲を高めるには、子どもたちの幸福感を高めることです。「学校に行くと元気になる。」こうした教育経営の代表的な姿が、「自治的集団づくり」なのです。
自治的集団の育成には、3つのステップがあります。
第1段階は、リーダーである教師との信頼関係です。教師との信頼関係をベースに、子どもたちは互いにかかわり、やがて、信頼関係を形成します。信頼関係を築くことも子どもたちにとっては挑戦ですから、その挑戦のエネルギーを引き出すのが、教師との信頼関係になります。
教師と子ども、子ども同士の良好な関係性の上に、集団としての問題解決能力を身につけます。この力が高まった集団が、自治的能力を持ちます。
交流が促進されないのは、その場に安心感がないからです。先ほども述べたように、子どもたちにとって、かかわることは挑戦です。かかわることに不安があったらかかわろうとはしません。また、交流の場そのものが量的に少ないことも考えられます。まず、ルールを設定するなどして安心感を確保した上で、交流の量を増やしていくことです。
本書では、あまり教育書で扱わない「幸せになる力」に向きあいました。その力をつける実践例として挙げたクラス会議は、自分たちの在り方を自分たちで決めたり、誰かを助けるための具体的行動を考え合ったりします。
私たちは、人を幸せにすることで幸せを感じる力を持っています。誰かを助け、集団や仲間に貢献する活動は、自分たちの生活の質を上げると共に、一人ひとりの幸福感を高めるのです。
教え子たちには、激変する社会を「生き延びる」「生き残る」というような生き方ではなく、「幸せ」に歩んで欲しいと思いませんか。教え子たちの幸せを考えることは、私たち教師の幸せを考えることにもつながります。そろそろ、人が幸せになる力をどう育てるかを、空理空論ではなく具体的実践を通して考えませんか。