- 著者インタビュー
- 算数・数学
教材や発問を子どもに投げかけたらどのような声が生まれるのかを予測し、紙に書くことで、子どもの姿が具体的に見えてくるからです。
多くの場合、その姿は1種類ではなく複数のパターンが見えてきます。つまり、子どもの考えには「ズレ」があることがわかるのです。書くことで、このズレが具体的に浮き彫りになってきます。
子どもの声が具体的に予測できると、その次の手だてもおのずと見えてきます。ズレを乗り越えるために子どもたちが考える手だてや教師の手だてが、次々と浮かんできます。
子どもの声をメモするという一見単純な作業ですが、そこから子どもの声でつくり出す授業展開が見えてくるのです。
授業展開のどこかでズレが生まれる「しかけ」をつくることです。教師が提示した課題に対して、AとBの2つの考えが生まれるようなしかけをつくるのです。
子どもは、自分とは異なる考え方に出会うと不安になります。それと同時に、本当の答えを知りたくなり、能動的に動き出します。このようなズレを「友だちの考えとのズレ」と呼びます。この他にも、子どもたちの予想とは異なる結果に出会うときに生まれるのが「予想とのズレ」です。子どもが本来もっている感覚とはあえて異なる事象に出会わせることで生まれるのが「感覚とのズレ」です。これまでの学習内容からジャンプした課題に出会ったときに感じるのが「既習事項とのズレ」です。
このようなズレが生まれるような課題づくりを心がけています。
終末場面でいつも教師が「まとめ」を行うと、子どもは授業に真剣に参加しなくなります。終末場面だけ聞いていれば、1時間の授業ダイジェストを教師が解説するからです。
そこで例えば、まとめの場面で具体的な問題を提示し、その解き方を具体的な説明文でノートに記述させます。「○○の解き方を、言葉や図を使ってノートに書きましょう」と指示します。
ただ、このようなまとめが苦手な子どももいます。その際は、「この問題を解くために必要なキーワードは何かな?」と子どもに投げかけます。子どもから生まれたキーワードを、複数板書します。それらを使ってまとめを書かせます。「キーワード作文」という手法です。
形式的なまとめは、教師の自己満足に過ぎません。具体的な問題の解き方を書かせることで、理解度の診断や学びの定着が図られるのです。
「問題解決学習を重視するクラスはペーパーテストに弱い」という指摘があります。算数で大切な学力の1つは「数学的な考え方」です。この力は、問題解決学習で伸ばすことができます。しかし、「技能」や「知識・理解」も大切な算数の学力です。ところが、この学力を問題解決学習で十分に定着させるのは難しいものです。
そこで、教科書の練習問題に授業時間中に取り組ませることで、確実な定着を図ります。机間巡視しながら子どもの取り組み状況を把握し、○つけをしていきます。その場で評価・定着度診断を行うのです。これを練習問題1問ごとに繰り返すことで、子ども一人ひとりの「技能」「知識・理解」の定着を確実にすることができるのです。
学級担任が毎日指導する教科の1つが算数です。その算数授業が子どもにとって愉しいだけで、「今日はどんな算数の授業が待っているのかなあ? 愉しみだなあ!」と朝の子どものモチベーションは高まります。もし、これが反対だったら…。「今日も算数があるのか。学校に行くのは嫌だなあ…」と毎朝感じるわけです。
子どもが算数を愉しいと感じると、教師も算数の授業が愉しくなります。「この教材を子どもたちに投げかけたら、どんな反応をするかなあ…?」と、早く授業を始めたくなることでしょう。子どもも教師も算数が愉しくて待ち遠しくなるような授業づくりのエッセンスを、本書を通して学びとっていただければ幸いです。
愉しい算数の授業を一緒につくっていきましょう!