著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「主体性」と「協働力」の育成は、児童生徒との個人的信頼関係から
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2016/2/25 掲載

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を勇気づけたい」と願い、研究会の助言や講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。
主な著書に、『スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 』『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『クラス会議入門』(以上、明治図書)などがある。

―本書は「学級を最高のチームにする極意」シリーズの第7弾として、テーマは「信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ」です。本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 授業や活動がうまくいかないという話をお聞きします。それは教育活動の基盤となる学級集団の機能が低下しているからです。集団がまとまり、集団としての機能を高めるために、本当にしなくてはならないことを全国の先生方と書きました。まず、理論編で、その考え方を知り、実践編で、自分にできる実践を探してください。

―次期指導要領のキーワードの一つとして「アクティブ・ラーニング」が挙げられていますが、その柱とされる「主体性」「協働力」について、先生は本書の中で「安心感のある学級づくり」が土台となると述べられています。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 アクティブ・ラーニングの基盤は、主体性と協働力です。わかりやすく言うと積極的な問題解決能力です。子どもたちが積極的になるのは、安心感が保証されたときです。能動的なクラスをつくりたいならば、子どもたちが安心して生活できる環境をつくることが第一です。その安心感をもたらすのが教師との個人的信頼関係なのです。

―Q2で挙げられている子ども達の成長のベースとなる「よい関係づくり」には、まずどのようなことが大切でしょうか。

 個人的信頼関係といっても、友達のような関係を結べばいいというわけではありません。安心感という言葉に象徴されるように、安全基地のような存在になることです。子どもたちが失敗した時、心細い時などに逃げ込めるような、包み込んでくれる存在です。だから、ただ仲がいい関係ではありません。大人としてのポジションに立つべき時はしっかりと立つことができて、方向性を示したり、ブレーキをかけてあげたりすることが大切です。

―アクティブ・ラーニング時代の学級づくりにおいて、先生方が目指す学級づくりのゴールとして「自治的集団づくり」を挙げられています。同時発刊となっています単著『スペシャリスト直伝! 成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』でも詳しく解説されていますが、教師の指導を中心としたこれまでの学級づくりから「自治的集団づくり」を目指すには、どのようなことから始めればよいでしょうか。また、鍵となることは何でしょうか。

 矛盾するように思うかも知れませんが、自治的集団のような一見教師が指導していないように見える集団を育てるためには、子どもたちと個人的信頼関係を築く必要があるのです。子どもたち同士で動くことができるようになるためには、ルールが守られなくてはなりません。ルールをしつける時には、ルールを守った場合に認め、また、破った場合にはきちんと指導しなくてはなりません。信頼関係の強さは、教師の指導可能性の指標なのです。

―小学校高学年や中学校に入ると、子ども達も思春期を迎え、かかわり方にも工夫が必要になってくると思います。先生は思春期の子どもとのかかわり方についても書籍を出されていますが、思春期の子ども達と向き合う際のポイントがあれば教えて下さい。

 思春期の指導の原則は、ずばり「ひいき」することです。一人をひいきしたら、学級崩壊の引き金を引くことになります。全員をひいきするのです。ひいきするとは、よき理解者になることです。よき理解者となるためには、子どもたちの話をよく聞くことです。子どもたちの話をよく聞いた教師だけが、子どもたちに要求できるのです。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 少し角度を変えて申し上げます。学校の多忙化、それに伴う、教職のブラック化なんてこともささやかれるような時代となりました。
 しかし、子どもたちと信頼関係で結ばれたら、ほとんどの苦労は飛んでしまうのも現実ではないでしょうか。実質的な業務の整理と同時に、子どもたちとの信頼関係の構築を着実に進めることは、私たちが生き生きと仕事をするために欠かせないことです。信頼し、信頼されることは私たちのエネルギーとなります。
 本書は、信頼関係で結ばれたエネルギー溢れる教室をつくるための一助となること間違いありません。

(構成:及川)

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