著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
小1担任は、道標となって子どもを導きましょう!
北海道旭川市立啓明小学校教諭宇野 弘恵
2016/3/1 掲載
今回は宇野弘恵先生に、新刊『スペシャリスト直伝! 小1担任の指導の極意』について伺いました。

宇野 弘恵うの ひろえ

1969年、北海道生まれ。旭川市内小学校教諭。2002年より教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル会員となり、思想信条にとらわれず、今日的課題や現場に必要なこと、教師人生を豊かにすることを学んできた。現在、理事を務める。

―本書には、小学校1年生の学級経営にかかわる指導の極意がたくさん掲載されています。まず初めに、ほかの学年とは違う、1年生担任だからこそ、大切にしなければならないことは何だとお考えですか。

 小1担任最大の仕事は、学校で学ぶ楽しさを教えることだと思います。
 「楽しさ」とは、単に、わかる楽しさ、できる楽しさのことではありません。一人では決して辿り着けない答えを見い出すこと、友達がいたから気づいたりわかったりすること、仲間と一緒だから困難な課題が解決できることなど、他者とのかかわりでしか得らない充実感や達成感が「学びの楽しさ」であると考えます。
 「学校」という初めての場所で学ぶ楽しさを実感させることは、その後の学びへの姿勢にも大きく影響するのではないでしょうか。

―本書の中で、ほかの学年にはない大きな仕事の一つとして、入学関係の仕事があると書かれています。2章では入学準備チェックリストも紹介されていますが、準備を確実かつ迅速に進めるためのポイントを教えてください。

 まずすべきことは、全体像を掴むこと。その上で、仕事に優先順位を付けること。次に、期限を切り、責任の所在を明確にすること。そして、それらの情報を一元化し(私はチェックリストとしてまとめている)、関係者全員で情報を共有することです。最後に、複数の目で確認し、間違いや漏れを防ぎます。「絶対にどこかに間違いがあるはずだ」という前提でチェックすることが肝要。晴れの入学式の日に、子どもや保護者に不快で悲しい思いをさせないためにも、最終チェックは入念に行いましょう。

―本書では、絵本を活用した指導のアイデアがいくつか紹介されています。先生のおすすめの実践を改めて教えてください。

 集中時間が短い、あるいは「聴く」経験が少ない1年生にとって、絵はすっと集中できる有効なアイテムです。そういった利点を生かして、私は次のような活用を試みています。
 一つ目は、始業前(あるいは、授業初め)の読み聞かせ。しっとりとした雰囲気を醸成すると同時に、「読み聞かせ=楽しい=お勉強は楽しい」と価値を変えていく効果もあります。
 二つ目は、道徳授業での活用。1年生にとって、わかりやすく課題を提示することができます。全文を読み聞かせることはせず、象徴的な場面を使って授業を行います。絵本は別な機会に読み聞かせることで、一歩引いて授業をフィードバックすることができます。
 ここまで、読み聞かせの教育的効果ばかりに触れましたが、私が絵本を活用するのは、私自身が絵本が大好きだからです。人生、好きなものが一つでも多い方が幸せ。楽しいことが一つでも多い方が幸せ。絵本に触れることにより、人生の喜びや楽しみを得る子がいるかもしれないなあというのが、絵本活用の一番の理由です。

―1年生の保護者の中には、初めて小学校とかかわる方も多いと思います。6章で保護者とのかかわり方にも触れていただいておりますが、関係構築のためにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。

 保護者だって「保護者1年生」。わからないことや不安なことがあるのは当然です。
 しかし、1年生が徐々に自立していくように、保護者も徐々に学校に慣れ子どもの自立を促してくださる存在になっていただかなくてはなりません。ですから担任は、保護者の戸惑いや不安に丁寧に向き合いながらも、学校とはどういうところか、保護者として子どもとどう向き合うべきかについて知っていただけるようなかかわりをすべきなのです。
 担任とのコミュニケーション量が多いほど保護者の満足度は高いというデータがあります。家庭訪問や個人面談だけではなく、日常的に保護者とつながる工夫をすることが、両者の信頼確立につながることを示唆しています。
 立場は違えども、教師も保護者も子どもの幸せな成長を願う存在。保護者は敵ではなくチームメイトという意識でかかわることが、互いの心の距離を近づけ、互いに信頼し合う第一歩となるのではないでしょうか。

―最後に、「初めての1年生担任で不安」「久しぶりに1年生担任に決まった」という読者の方にメッセージをお願いします。

 小学校1年生にとっての担任は、大きくて絶対的な存在です。小1担任は、いつも同じ場所にいていつでもその存在を確かめられる北極星のようにあるべきだと考えます。
 道に迷った旅人が北極星を頼りに進むように、担任が道標となれば、子どもたちは安心して自分の足で歩くことができます。だから教師は自分の言動に自信をもち、時に迷いながらも、たどり着くべきゴールを見失うことなく歩み続けましょう。
 そして、間違ったりできなかったりすることも、共に楽しみましょう。瑞々しい感性で、日々すくすくと成長する姿を間近で見られることが、1年生担任最大の幸せと言ってもいいかもしれません。

(構成:茅野)
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