著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ルールの在り方が、集団の在り方を決める
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2016/3/11 掲載

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を勇気づけたい」と願い、研究会の助言や講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。
主な著書に、『スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『クラス会議入門』(以上、明治図書)などがある。

―本書は「学級を最高のチームにする極意」シリーズの第8弾として、テーマは「集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得」です。集団づくりの基礎とも言えるテーマですが、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 学級集団の在り方はルールが決めます。荒れているクラスは、ルールが崩れています。また、子どもたちが生き生きと学んでいるクラスにはよいルールが定着しています。つまり、よいクラスにはよいルールがあるのです。集団づくりの成功は、よいルールを定着させることができるかどうか鍵です。本書は、よいクラスをつくるルールと指導の方法が小学校、中学校別に具体的に示されています。

―本書のタイトルにもなっていますが、ルールづくり、規律指導においては、「定着しているかどうか」が重要です。本書でも詳しく紹介されていますが、「ルールを定着させる」ためには、まずどのようなことが大切でしょうか。

 ルール指導は、各種スキルトレーニングの指導過程と似ています。@そのルールの必要性の共通理解 Aモデリング Bリハーサル Cフィードバックの繰り返し。山本五十六の有名な言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」が、とても端的に、その指導過程を表しています。しかし、子どもたちの発達段階は多様です。その指導の実際をプロの実践家たちが本書では教えてくれます。

―ルールづくりにあたっては、子ども達の意識を高めるため、子ども達に相談して、また子ども達自身で決める取り組みもよく行われていますが「教師が定めるルール」と「相談して決めるルール」の違いについて教えて下さい。

 ルールの定着には主体性が大事です。ルールは子どもたちが、教師の居ないところで守ったときに初めて定着したと言え、また、そこでルールとして機能したと言えるでしょう。人に言われたことと自分で決めたこと、どちらが守る気になるかと言えば後者です。また、子どもたちの話し合いで決めると、互いに声を掛け合ったり、助け合ったりしてルールを守ろうとするので、子どもたちの関係性も深まります。

―ルールを徹底して集団をまとめていくには、ルールを守れなかったり、規律を乱した際の言葉がけ、指導も大切になってきますが、どのような視点・取り組みが大切でしょうか。

 ルールをルールたらしめるのは、ペナルティの存在です。ルールを破ってもペナルティがなかったら、単なるスローガンになります。しかし、実際の教室で子どもたちに罰を与えることは教育的ではありません。だから、ルールを破った場合には、きちんと理由を示して語る、やり直しをさせる、また、出来ている子をほめるなどの明確な対応をすることが必要です。そこはプロたちが実にうまくやっています。本書をご覧下さい。

―小学校と中学校では、子どもの発達段階も違い、ルールや規律づくりについても変わってくる部分もあるかと思います。発達段階に応じた取り組みのポイントについて教えて下さい。

 発達段階に応じて、子どもたちに教えるという指導から、委任するという指導に切り替えていくことが必要です。教師がヒーローになって、教えて取り締まっている限りは子どもたちが自らルールを守るクラスにはならないでしょう。教師が出なくても、ルールが守られるクラスをゴールイメージとして描いて指導をします。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 ルールの指導は、一年間いつでもできますが、後になればなるほど、時間がかかるようになります。適時性で言えば、1学期です。できたら、6月まで。まずは、本書を参考にして自分のクラスに必要なルールを書き出してみて下さい。そして、子どもたちに出会ったら、その実態と対話しながら必要なルールを指導してみて下さい。指導方法も本書にはヒント満載です。実力ある実践家が、有効な指導法、そして失敗しそうなポイントも示しています。かなり使える一冊になっています。

(構成:西浦)

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