- 著者インタビュー
- 社会
長瀬:ゼロから学べるシリーズのスタートは「学級経営」でした。大学ではなかなか教えてもらえない、現場でも見よう見真似でしか学べない。そうした中で、ゼロベースで学級経営について学ぼうと考えて書いたのがそもそもの始まります。教科、しかも社会となってまずイメージしたのが「社会科が苦手な先生」「社会科を専門にしてこなかった先生」です。僕は中学校の社会科の免許はもっていましたが、教員養成課程のある大学出身ではなく、社会科を専門に学んではいませんでした。この10年間で学んだことをいかして、そうした「専門でない先生も社会科を好きになってもらいたい」と思ったのが本書執筆の大きなポイントです。
佐藤:そうですよね。私が教員になったのは30年前ですが、その頃の社会科の授業研究は活気がありました。実践者からの発信も勢いがありましたし、社会科の書籍も多かった記憶があります。ところが、今は残念ながらそうではありません。教員になってから、「社会科の授業参観はあまりしたことがない」「指導案を書いたことがない」という先生もいると思います。そういう先生方が「社会科の授業のしかたがわからない」と感じるのは、ごく自然なことです。そういう先生方にこそ本書を読んでほしいです。
長瀬:佐藤先生、どうでしょうか。僕も聞いてみたいですね。若い先生はまず、明日の授業をどうするかだと思います。しかし、明日の授業ばかり求めているといずれ追いついていかなくなります。そのため、まずは単元の計画を立て、大まかにどんなことを授業でしていくか考え、そのうえで細かく授業について考えていくことが大切だと思っています。
佐藤:基本は長瀬先生のおっしゃる通りですね。まずは教科書を1単元ずつ読み通すことから始めてみましょう。そうすると、単元の中で指導する内容が概括できます。そのうえで、「学習問題」「中心発問」「メインとなる学習活動」を一つずつ決めます。もちろん「本時のねらい」に沿っていることが前提です。それらを明確にするだけでも、授業の骨格はしっかりとしたものになります。小学校教師は社会科の授業だけしているわけではないので、現実的な方法だと思います。あとの肉付けは、本書に書かれている様々な知恵をぜひ真似してほしいですね。
佐藤:社会科は他教科に比べたら、あまり人気がありません。その理由の一つに「暗記したり、覚えたりするのが苦手」ということもあるでしょうね。確かに「無意味なテストのための暗記」は、子どもたちにとってはつらいですね。それならば、楽しく覚える工夫もできると思います。クイズ化、ゲーム化、ICTによるフラッシュ型教材等、方法は多様です。これは表現活動させる場合も同様で、劇化や新聞づくりといった楽しい活動も本書に紹介されています。長瀬先生は、様々な素材から授業を考えていますよね?
長瀬:社会科に関わることはニュースや大河ドラマやバラエティ番組のクイズなど、結構いろいろなところにあります。いつも楽しい授業にできないかと考えています。授業者が授業を楽しむことがまず大切ですね。
佐藤:社会科を学習する前に、子どもたちは生活科で「まちたんけん」のような活動をしています。その経験を生かすことがまず大事だと思います。教師から一方的に「メモをとることとマナーが大事」と言うよりは、「見学では何が大事だと思う? 話し合ってごらん」と事前に投げかけるだけで、子どもたちの見学に対する真剣さは変わってきます。そのうえで、見学に対する課題意識を深めておくことです。子どもたちにとって調べ活動が切実であるほど、しっかりとした見学学習が可能となります。
長瀬:何を学べばよいかを明確にしておくことだと思います。それを教師も子どもたちも共有することができればうまくいきます。詳しくは、ぜひ、本書を読んでほしいですね。
長瀬:情熱が教師を成長させます。ぜひ、楽しい授業をつくりたい!!という熱い情熱を持ち続けてほしいと願っています。この本をきっかけに、「楽社研―楽しい社会授業づくり研究会」を立ち上げました。一緒に学んでいきましょう!!
佐藤:私は社会科が小学校の頃から好きでした。きっかけは、4年生のときに取り組んだ一つの活動です。当時秋田県の小学生だった私は、秋田県の市町村地図を友達と一緒に模造紙に書きました。秋田市のように行ったことのある地名はなじみがありましたが、「横手市はここにあるんだ」と、描いてみて位置がわかった未知の地もありました。
その模造紙は「秋田県の市町村地図」という掲示物としてその後の社会科の学習でずっと使われました。自分たちで作ったということもあり、私自身、「県の学習」に興味をもち、一気に社会科が好きになったのです。
先生方には、本書から社会科好きの子どもを育てるためのヒントをつかんでほしいです。私自身もそのような子どもを育てるために、長瀬先生たちと共に「楽社研―楽しい社会授業づくり研究会」で、社会科を盛り上げていきたいと思っています。