著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
授業でつながり、授業でつなげ、子どもたちのやる気を引き出す具体的実践の数々
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2016/6/3 掲載

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を勇気づけたい」と願い、研究会の助言や講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書に、『スペシャリスト直伝! 成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』(小学校編・中学校編)『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』(小学校編・中学校編)『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』(小学校編・中学校編)『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』(小学校編・中学校編)『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『クラス会議入門』(以上、明治図書)などがある。

―本書はベストセラー「学級を最高のチームにする極意」シリーズの第9弾として、テーマは「やる気を引き出す全員参加の授業づくり 協働を生む教師のリーダーシップ」です。本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 本気で学力を高めようと思うならば、何に最も力を注がなくてはならないでしょうか。教材研究でしょうか、教え方の研究でしょうか。優良な授業コンテンツがネットで配信されるような時代に、それらは相対的に意味が薄れることが予測されます。どのように条件整備をしたらそうしたコンテンツに子どもたちが積極にアプローチするようになるか、そんな問題意識を基に、全員参加の授業の具体像に迫りました。

―タイトルにもなっています「全員参加の授業」「一人残らずわかる授業」には、およそ3つのアプローチがあると述べられています。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 学力を高めるには、「学習の質を上げる」こと、「学習の時間を増やす」こと、そして、「学習への意欲を高める」ことです。この3つのアプローチはかけ算構造です。どんなに質の良い学習内容にたくさん触れさせても、意欲のない子どもには入っていきません。「全員参加の授業」「一人残らずわかる授業」を実現するためには、子どもたちの意欲を高めることです。

―次期指導要領に向けて、アクティブ・ラーニングという言葉が注目され、「協働」という言葉が一つのキ―ワードとしてあげられています。協働には「課題意識の共有」が必要になってくると思いますが、ここでの教師の役割(教師ができること)について教えて下さい。

どんなに発問や指示をブラッシュアップしても、どんなに授業ネタを精選しても、誰が発問や指示をし、誰がネタを出すのかに注目している子どもたちがいるのです。つまり、信頼関係のない人が働きかけても下位層の子どもたちは、それを受け入れない可能性があります。学習課題が一人ひとりにしっかり伝わるためには、授業者である教師が学習者である子どもたち一人ひとりと確かな信頼関係を構築することが必要です。

―子どもたちの学習意欲(やる気)は、喚起することもさることながら、いかに継続していくか、ということも大きな課題です。継続を生み出すには何が重要でしょうか。

 やる気は、よく炎に例えられます。火を燃やし続けるには、燃料が必要です。やる気の燃料は、安心感です。私たちは安心感が満たされたときにやる気になります。傷付けられないこと、居場所があること、認められることなど子どもたちが教室においてもつ基本的な願いを教師がしっかりと把握し、満たし続けることがやる気の炎を燃やし続けることにつながります。

―本書では国語の詩の授業から、体育の短距離走やリレーまで、さまざまな教科の授業例が紹介されています。それぞれに教科特性はあると思いますが、子どもの力を信頼して、まかせるような場面をどう設定すればよいのか。そのポイントがあれば教えて下さい。

 子ども同士の協働は、スポーツの試合に例えればわかりやすいです。教師は審判、子どもたちは選手です。試合に審判がしゃしゃり出てしまったら、ぶちこわしです。審判ができることは、選手が試合をのびのびとやれるだけの正確なジャッジをすることです。つまり、活動に必要なルールを設定し、それを定着させて、あとはそれを見守ることです。何もしないで任せることは、放任です。子どもの自由度の高い活動は、その活動が成り立つためのルールや人間関係の調整などしっかりとした下準備に支えられます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 全員参加を実現している教師の教室では、なぜ、学習に向き合いにくい子どもたちが学習に向き合うことができるのでしょうか。それは、教室が、学習者にとって安心できる場になっているからです。それでは、具体的にどのようにして安心の環境設定をしているのでしょうか。本書には有効な実践が満載です。みなさんの教室を子どもたちのやる気で満たす実践にヒントが多数見つかることと確信しています。

(構成:西浦)

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