- 著者インタビュー
- 授業全般
本気で学力を高めようと思うならば、何に最も力を注がなくてはならないでしょうか。教材研究でしょうか、教え方の研究でしょうか。優良な授業コンテンツがネットで配信されるような時代に、それらは相対的に意味が薄れることが予測されます。どのように条件整備をしたらそうしたコンテンツに子どもたちが積極にアプローチするようになるか、そんな問題意識を基に、全員参加の授業の具体像に迫りました。
学力を高めるには、「学習の質を上げる」こと、「学習の時間を増やす」こと、そして、「学習への意欲を高める」ことです。この3つのアプローチはかけ算構造です。どんなに質の良い学習内容にたくさん触れさせても、意欲のない子どもには入っていきません。「全員参加の授業」「一人残らずわかる授業」を実現するためには、子どもたちの意欲を高めることです。
どんなに発問や指示をブラッシュアップしても、どんなに授業ネタを精選しても、誰が発問や指示をし、誰がネタを出すのかに注目している子どもたちがいるのです。つまり、信頼関係のない人が働きかけても下位層の子どもたちは、それを受け入れない可能性があります。学習課題が一人ひとりにしっかり伝わるためには、授業者である教師が学習者である子どもたち一人ひとりと確かな信頼関係を構築することが必要です。
やる気は、よく炎に例えられます。火を燃やし続けるには、燃料が必要です。やる気の燃料は、安心感です。私たちは安心感が満たされたときにやる気になります。傷付けられないこと、居場所があること、認められることなど子どもたちが教室においてもつ基本的な願いを教師がしっかりと把握し、満たし続けることがやる気の炎を燃やし続けることにつながります。
子ども同士の協働は、スポーツの試合に例えればわかりやすいです。教師は審判、子どもたちは選手です。試合に審判がしゃしゃり出てしまったら、ぶちこわしです。審判ができることは、選手が試合をのびのびとやれるだけの正確なジャッジをすることです。つまり、活動に必要なルールを設定し、それを定着させて、あとはそれを見守ることです。何もしないで任せることは、放任です。子どもの自由度の高い活動は、その活動が成り立つためのルールや人間関係の調整などしっかりとした下準備に支えられます。
全員参加を実現している教師の教室では、なぜ、学習に向き合いにくい子どもたちが学習に向き合うことができるのでしょうか。それは、教室が、学習者にとって安心できる場になっているからです。それでは、具体的にどのようにして安心の環境設定をしているのでしょうか。本書には有効な実践が満載です。みなさんの教室を子どもたちのやる気で満たす実践にヒントが多数見つかることと確信しています。