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争う集団から力を合わせる集団に変化します。問題が起こったときにどうしたら解決できるのか知恵を出し合うようになります。授業のねらいは教師と子どもたちの共同の課題となり、その達成のために協力し合うようになります。しかし何よりもの変化は、学級がそれほど変わっていなかったとしても、教師自身の子どもを見る見方が変わり、子どもたちの成長を信頼できるようになることだと思います。
自分自身がアドラー心理学で勇気づけられたことから、子どもたちも勇気づけたいと考えました。アドラー心理学を学ぶ前の私は、子どもや保護者、同僚や管理職に認められる教師になろうともがいていました。アドラー心理学を学んだことで、私自身の大げさに言えば人生の役割を実感することができました。それはとても幸せなことだと思っています。
「勇気づけ」と「ほめる」は多くの部分で重なります。しかし「ほめる」は条件付きで、100点を取ったものはほめられますが、30点を取ったものはほめられません。その反対に、勇気づけは30点を取ったものにこそ有効です。その違いを明確にし、勇気づけを意識して使えるようにするために、「ほめるな」ということさえあります。
勇気づけはテクニックというよりも態度といえるかもしれません。なぜなら相手を元気にしようと「勇気づけを使おう」とした途端、かえって子どもの活力を奪う、勇気をくじくことがあるからです。怒りや褒美や罰を使って相手をコントロールしようとする態度を捨て、よりよく生きようとする子どもたちのあらゆる努力を尊敬する態度に切り替えることが必要です。あえてコツといえば、自分の態度や言動から子どもは勇気づけられたかそれとも勇気をくじかれたかをモニターすることでしょうか。
アドラーは、彼自身の心理学を、限られたものだけがつかえる特別なものにしようとはせず、親も教師も子ども自身も誰もが使える心理学にしようと考えていたようです。しかし、実現しようと目指していたものは「共同体感覚」の育成にあり、人間のみならず世界が、ひいては宇宙が調和してあることを目指した奥の深い心理学でもあります。読者のみなさんが、この本をきっかけにアドラーを楽しみ、実践し、みなさんの教師としての仕事が楽しく豊かなものになることを願っています。