- 著者インタビュー
- 社会
おいしくて(楽しくて)、栄養になる(学力がつく)料理(授業)は、食材(ネタ)と上手い調理法(授業方法)が不可欠です。内容教科としての社会科の目標を見据えて開発したネタの導入やアクティブ・ラーニングにどのように活用していけばよいのかを、具体的におもしろく提案したいと考えました。
協同学習は「一人で学ぶ、協同で学ぶ、人間を学ぶ」学習思想と方法です。そして協同学習の導入では、多様な価値観の尊重と時間管理及び役割分担が大切です。
例えば、「なぜ行基は朝廷から弾圧されたのか?」という課題に対して、行基に付き従う庶民との土木工事などの社会活動と既習内容(税の種類や公地公民など)を手がかりに、まず個人だけで5分程度考えます。その後、8分程度で小集団の役割分担確認とメンバーとの情報交換で課題に対する多様な視点を獲得します。その際、仲間への説明の仕方やメモの取り方及び聴く態度などのマナーにも留意させます。この組織的な協同学習を通して情意面と認知面の両面を育てていくのです。
情報源は書籍(特に新書や新旧概説書のシリーズものなど)が第一です。ほかに歴史(ドラマ含む)のTV番組をヒントにすることも多いです。例えばダビンチの鏡文字はテレビで紹介していたのを書籍で裏付けをして開発したものです。天才ダビンチの鏡文字は、当時カトリック社会の価値観(非科学性など)に支配された時代状況がうかがえるネタといえるでしょう。
外部からは見えない「思考力・判断力」が「見える化」されるのは、「表現力」です。口頭発表や記述内容が考えられますが、物理的に生徒一人ひとりに向き合える方法として「ワークシート」を活用しています。課題に対する生徒の思考・判断や小集団情報交換の内容を毎回回収して評価しています。そして返却時に評価規準と判定基準を生徒に伝えています。これにより生徒は自分のワークシートの思考記述内容のレベルを理解し、次回授業に向けた改善点を考えることができます。
教師はよく「授業で勝負!」と言われますが、これは教師のあらゆる教育活動の中で、授業こそが一番責任感と創造力が試されるからだと思います。創造力は教師の個性が如実に反映されます。その個性を大切にするとともに社会科の目標を見据えつつ、目の前にいる生徒が「考え、話し合い、夢中になる!」ようなネタを提案しました。一つでも「使える!」ネタがあれば、著者として望外の喜びです。