著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「生徒が夢中になる!」授業のネタ開発は、教師の創造力が試される!
兵庫県神戸市立大原中学校教諭乾 正学
2016/7/7 掲載
 今回は乾 正学先生に、新刊『中学歴史 生徒が夢中になる!アクティブ・ラーニング&導入ネタ80』について伺いました。

乾 正学いぬい しょうがく

1967年生まれ。大阪府出身。1990年関西学院大学文学部卒業。1993年より神戸市立の中学校教諭として勤務。2001年兵庫教育大学大学院学校教育研究科教科領域教育専攻(社会系コース)修了。2004年から2012年まで神戸大学附属発達科学部附属住吉中学校(現神戸大学附属中等教育学校住吉校舎)教諭を経て、現在、神戸市立大原中学校教諭。
主な著書として、『わかる!できる!笑いがある!協同学習で創る中学歴史授業のヒント』(明治図書)などがある。

―本書は「アクティブ・ラーニング&導入ネタ」シリーズの中学歴史編として、生徒がアクティブになる目からウロコの歴史授業ネタが、豊富に紹介されています。まず、本書のねらいについて教えてください。

 おいしくて(楽しくて)、栄養になる(学力がつく)料理(授業)は、食材(ネタ)と上手い調理法(授業方法)が不可欠です。内容教科としての社会科の目標を見据えて開発したネタの導入やアクティブ・ラーニングにどのように活用していけばよいのかを、具体的におもしろく提案したいと考えました。

―先生は、社会科における「アクティブ・ラーニング」の切り口の一つとして、小集団学習の導入を挙げられています。導入のポイントについて教えてください。

 協同学習は「一人で学ぶ、協同で学ぶ、人間を学ぶ」学習思想と方法です。そして協同学習の導入では、多様な価値観の尊重時間管理及び役割分担が大切です。
 例えば、「なぜ行基は朝廷から弾圧されたのか?」という課題に対して、行基に付き従う庶民との土木工事などの社会活動と既習内容(税の種類や公地公民など)を手がかりに、まず個人だけで5分程度考えます。その後、8分程度で小集団の役割分担確認とメンバーとの情報交換で課題に対する多様な視点を獲得します。その際、仲間への説明の仕方やメモの取り方及び聴く態度などのマナーにも留意させます。この組織的な協同学習を通して情意面と認知面の両面を育てていくのです。

―本書には、「万能の天才!ダビンチはなぜ鏡文字を使ったのか」「鼠小僧次郎吉を裁く!」など、生徒が興味をひきつけられる授業ネタが満載ですが、このような授業ネタはどのように生み出されているのでしょうか?

 情報源は書籍(特に新書や新旧概説書のシリーズものなど)が第一です。ほかに歴史(ドラマ含む)のTV番組をヒントにすることも多いです。例えばダビンチの鏡文字はテレビで紹介していたのを書籍で裏付けをして開発したものです。天才ダビンチの鏡文字は、当時カトリック社会の価値観(非科学性など)に支配された時代状況がうかがえるネタといえるでしょう。

―アクティブ・ラーニングでの先生方の関心の高いものの一つに、「評価をどうするか」というものがあります。本書では「思考・判断・表現力」の観点に特化して評価規準と判定基準を入れていただいていますが、その手立てと活用の仕方について教えてください。

 外部からは見えない「思考力・判断力」が「見える化」されるのは、「表現力」です。口頭発表や記述内容が考えられますが、物理的に生徒一人ひとりに向き合える方法として「ワークシート」を活用しています。課題に対する生徒の思考・判断や小集団情報交換の内容を毎回回収して評価しています。そして返却時に評価規準と判定基準を生徒に伝えています。これにより生徒は自分のワークシートの思考記述内容のレベルを理解し、次回授業に向けた改善点を考えることができます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 教師はよく「授業で勝負!」と言われますが、これは教師のあらゆる教育活動の中で、授業こそが一番責任感創造力が試されるからだと思います。創造力は教師の個性が如実に反映されます。その個性を大切にするとともに社会科の目標を見据えつつ、目の前にいる生徒が「考え、話し合い、夢中になる!」ようなネタを提案しました。一つでも「使える!」ネタがあれば、著者として望外の喜びです。

(構成:及川)
コメントの受付は終了しました。