著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「学習をアクティブにする!」独創的なアイデア満載の社会科アクティブ・ラーニング
広島大学大学院教育学研究科教授小原 友行
2016/7/14 掲載
 今回は小原友行先生に、新刊『アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校社会科の授業プラン』について伺いました。

小原 友行こばら ともゆき

1951年広島県生まれ。広島大学教育学部高等学校教員養成課程社会科卒業。広島大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士課程前期・後期修了。高知大学教育学部助手、同助教授、広島大学学校教育学部助教授、同教授などを経て、現在は同大学院教育学研究科教授。博士(教育学)。
主な著書に、『「思考力・判断力・表現力」をつける中学地理授業モデル』『「思考力・判断力・表現力」をつける中学歴史授業モデル』『「思考力・判断力・表現力」をつける中学公民授業モデル』『「思考力・判断力・表現力」をつける社会科授業デザイン』(小学校編・中学校編)、『論争問題を取り上げた国際理解学習の開発』、『小学校社会科授業の基礎用語辞典』(以上、明治図書)などがある。

―本書は「アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校授業プラン」シリーズの社会科編として、授業デザインの基本的な考え方に加え、アクティブ・ラーニングの3つの視点(「深い学び」「対話的な学び」「主体的な学び」)と、各教科それぞれの学習過程や学習活動を踏まえた具体的な単元における授業プランまでが、豊富に紹介されています。まず、本書のねらいと読み方について教えてください。

 本書のねらいは、大きく次の3点です。@「アクティブ・ラーニング」を取り入れた中学校社会科授業デザインの基本的な考え方を提案すること、A基本的な考え方に基づいて、地理的・歴史的・公民的分野の「アクティブ・ラーニング」型の代表的な小単元を開発すること、そしてB「アクティブ・ラーニング」を位置づけた評価方法を提案することです。

―先生は本書の中で、社会科学習において、これがなければ「アクティブ・ラーニング」とは呼べないアイデンティティとして、3つ挙げられています。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えてください。

 「アクティブ・ラーニング」とは、直訳すれば、「能動的学習」「積極的学習」「主体的学習」となりますが、社会科独自のものとはなりません。そこで、

@アクティブな市民性を育成する(社会認識を通して市民的資質を育成する)学習であること
A目標の全体性を保証する(知識・理解目標、技能・能力目標、態度目標を統一的に育成する)学習であること
B学習の主体性を保証する(生徒が主体的・協働的な活動を通して学び合う)学習であること

ととらえました。

―先生はアクティブな社会科授業デザインで重要なこととして、@目標の構造化、A学習材の開発、B学習過程の組織を挙げられています。本書には「伊達政宗の城下町づくりから災害への向き合い方を考えよう!」など、生徒が興味を持ちそうな魅力的な授業プランが収録されていますが、その教材・学習材を考える上でのポイントは何でしょうか?

 「アクティブ・ラーニング」を取り入れた社会科授業づくりのポイントは、生徒自身が主体的・協働的に思考・判断する、具体的には、「なぜ、どうして」「どうしたらよいか、どの解決策がより望ましいか」という問いが生まれるような教材・学習材を開発することだと考えます。単元の導入部で教材と出会う中で、そのような学習問題を生徒自身が発見することができれば、学習はアクティブになります。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 本書は、2009年3月刊行の『「思考力・判断力・表現力」をつける社会科授業デザイン 中学校編』、2011年10月刊行の『「思考力・判断力・表現力」をつける中学地理授業モデル』『同歴史授業モデル』『同公民授業モデル』に続く中学校社会科シリーズの1冊です。「アクティブ・ラーニング」という視点から、中学生が主権者としてたくましく成長してくれることを願って、新進気鋭の若手教師を中心に授業づくりにチャレンジしました。是非、ご活用いただければ幸いです。

(構成:西浦)

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