- 著者インタビュー
- 社会
社会科は、教材研究に時間がかかる教科です。社会科が専門ではない小学校の先生は社会科の授業が苦手だとよく耳にします。また社会科嫌いの子どもも多いというデータもあります。つまり、子どもたちが主体的に楽しく学べる社会科授業が展開されていないのでは?という問題意識がありました。
社会科は、そもそも「アクティブ・ラーニング」とならなければいけない教科です。それは、「知りたい」「調べたい」という問いを生み出すことから始まります。本書ではアクティブ・ラーニングの視点を通して、社会科授業の展開の仕方を読者に理解してもらいたいと考えました。
社会科というと「重要語句の暗記」というイメージがついてまわります。そのため、知識の習得がメインとなってしまい、一方的に知識を教え込む「講義型」の授業になりがちです。
しかし、社会科の目標には、「理解」と「能力」と「態度」が示されています。私は常々、社会科は、まず事象に関心をもち「かかわる」こと、そして、友達と事象を調べて考えることで「つながり、つなげる」こと、さらに事象と自分を関連させ、自らの生き方を「創り出す」ことができる学習展開を考えてきました。これは、論点整理でまとめられたアクティブ・ラーニングの視点「深い学び」、「対話的な学び」、「主体的な学び」に合致するものだと考えています。
昨今はICTの普及で、大型モニターやタブレット端末で問いや思考を深める授業が多くなってきています。しかしながら、社会科は社会的事象の意味を空間的に、時間的に、関係性的に構造化して捉えていくことが不可欠であり、それを授業の中でリアルタイムで表現するものは黒板に勝るものはないと考えています。子どもたちが調べた知識を位置付け、考えを価値付け、事象の意味へ方向付けていくものこそ「板書」であり、それを表現する技こそ、私たちプロの教師の「授業力」なんだと考えています。
「+αの活動例」はまさに「アクティブ・ラーニング」を発揮できる学習活動として、全単元の最後に展開できるように提案させていただきました。ポイントは「実社会とのつながり」です。ここでいう実社会とは子どもたちに手が届く社会です。社会科は住んでいる地域から、世界、そして過去、未来まで範囲が広がる教科です。ともすれば子どもたちを置き去りにしてしまいがちです。学んだことを生かせる場として、体験したり、表現したりすることで実際の社会に触れ、学びを深めていくことができます。
時代は「知識基盤社会」と言われ、社会の構造的な変化の中で子どもたちは大人になっていきます。覚える知識はすぐに変化します。例えば政治の仕組みはどうでしょう。議員の定数や選挙制度もこの数年で変わっています。自動車の性能はどうでしょう。もはやハイブリットが当たり前になり、電気自動車、自動運転の時代になってきています。
つまり、社会は重要語句を覚えるだけの学習ではなく、変化する社会の中で事象を見つめ、その意味を理解する力が必要なのです。その力こそ「かかわる」「つながる」「創り出す」場で生まれるのです。
本書での展開はあくまでも参考です。教材化すべき「ネタ」は身の回りにたくさんあることでしょう。しかし、どんなネタであろうと、それを手に取る学習意欲、それが何か調べようとする力、自分ならばと考える力を育てていくことが大切です。そのために「評価」をしっかりと行っていきましょう。毎時間、的確な評価をしていくことで、子どもたちに身につけさせたい力を育んでいくことができるはずです。