- 著者インタビュー
- 国語
国語教育の大きな目標は、学習者を一人前の言語生活者に育てることにあります。言語生活には、談話生活、文章表現生活、読書生活があり、相互に有機的に関連し合っています。ここでは、将来の読書生活を営むことのできる態勢づくりと、基礎・基本となる能力を体得する学習者の姿を求めて、〈読者〉と呼んでいます。
端的に、文章・作品について「書評」を述べる(話す・書く)ことができるようになる、と言ってみたいのです。文章・作品を味わいつつメタ認知し、その文章・作品についての意義を論じます。そのためには、当該の文章・作品はもとより、他の文章・作品、他の情報、他の考えと自分の考えの比較検討など、総合力が不可欠です。
本書の副題は、「辞典類による情報活用の実践的方略」です。この「辞典類」は、「国語辞典、漢字辞典、図鑑、デジタル教材、インターネット、新聞等」と注記しており、広い範囲の情報を指しています。提案は、これらを活用して、教材(教科書、学校)から離陸し、思考、協議、判断を経て、教材へ着地するという実践サイクルです。
拙稿「『漢字辞典』を読む―漢字・語句のアクティブ・ラーニング―」では、〈読者〉は「漢字辞典」だって読むという観点から、部首別漢字をおさえ、「木」「水」による漢字・語句の学習ネットワークを経て、教材「森林のおくりもの」や新聞記事の読みに進み、さらに自分の地域の飲み水を調べます。こんな学びをどう思いますか。
まず、私たち指導者が〈読者〉となる、教材からの離陸を楽しみ、学習者たちの離陸に対応する。そして、他の文章・作品、他の情報との有機的関連を組織し、情報と解釈の快い緊張感に満ちた授業展開を目ざします。有機的関連は、当該教材の学びを孤立させず、経験や既習事項、新たな情報と結んで、創造の読みを拓く元です。