著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
中学校・ユニバーサルデザインの授業にチャレンジ!
NPO法人ラヴィータ研究所 子ども発達相談センター・リソース「和」所長米田 和子
2016/8/30 掲載

米田和子よねだ かずこ

現在NPO法人ラヴィータ研究所 子ども発達相談センター・リソース「和」所長
特別支援教育士SV、学校心理士、臨床発達心理士

―本書のテーマは中学校におけるユニバーサルデザインの授業づくりですが、「ユニバーサルデザインの授業」って最近よく耳にしますが、どんな授業のことをいうのでしょうか?

 「ユニバーサルデザインの授業づくり」とは「どの子にもわかりやすい授業づくり」ということです。通常の学級には発達の課題を抱える子どもたちだけでなく、母国語が異なる子どもたちや生活環境の異なる子どもたちなど様々な子どもたちが学んでいます。どの子どもにとっても理解しやすい授業環境・授業の導入の工夫・授業の流れ・板書の仕方・指示の提示など脳の働きに沿って、科学的に効果的な授業を展開していくことだといえます。ユニバーサルデザインの授業を工夫する時にいちばん大切なのは目の前にいる子どもたちがどのような学び方をしているのか、クラスの実態を客観的に把握して、実態に応じたユニバーサルデザインの授業を展開することだと考えます。

―本書のタイトルにある「ユニバーサルデザインの授業」と「合理的配慮」はどこが違うのでしょうか?

 上記のように「ユニバーサルデザインの授業」とはクラス全体の子どもたちによりわかりやすい授業を展開するための工夫ですが、発達の課題を抱えた子どもたちにとっては、よりわかりやすい工夫が求められる時があります。例えば、英語ノートの罫線も1ページ13行の通常のノートでは書きにくい空間認知の弱い生徒は1ページ8行の大きな罫線を使用することで細部の書き間違いが少なくなることがあります。このような個別的な支援や配慮を「合理的配慮」として実施することで、困難さを抱えながらも他の生徒と同じ学びが獲得できるようにすることが大切です。

―本書では通常の学級での実践に加えて、通級指導教室での支援も取り上げられていますが、通級指導教室はどんな役割を担っているのでしょうか?

 通級指導教室とは通常の学級に在籍しながらも、個別のニーズにあった指導を受けることで学びを深め、自信を持つことができるように支援する場所といえます。小学校では設置数も多く、利用する児童も増えていますが、中学校での通級指導教室はまだまだ数が少なく、支援の充実が望まれます。

―本書にはさまざまな教科のユニバーサルデザインの授業が紹介されていますが、この授業実践ではどこをポイントに読んでいただきたいですか?

 中学校では教科ごとに指導する先生が異なりますが、小学校とは違い、クラスごとの特徴に合わせて、教科の専門性を持って指導内容を工夫されています。各クラスの目の前の生徒たちがどこでつまずきやすいのかを把握しながら、クラスごとに導入の仕方を変えたり、板書の量やプリントのヒントを変えたりするなど工夫されています。掲載した指導案にはクラスの実態と個別の支援を必要とする生徒の実態を記載し、それに合うユニバーサルデザインの授業と個別の支援や配慮を工夫しています。生徒の実態に対してどのようなユニバーサルの取り組みや個別配慮が考えられるかを読み取っていただき、読者の方にも目の前の生徒のつまずきに視点を置いたユニバーサルデザインの授業を考えていただけたら…と思います。

―最後にユニバーサルデザインの授業づくりにトライしてみたい先生へのメッセージをお願いします。

 「わかる授業」を展開したいという教師の願いは普遍です。「わかる授業」を展開するためには、まずは子どもたちがどこでつまずいているのかを把握する視点が重要です。ユニバーサルデザインの授業に取り組んでいる先生方、学校は目の前の子どもたちのつまずきを客観的に把握し、そこから「わかる授業」を作り出す工夫をされています。ユニバーサルデザインの授業に取り組み始めると子どもたちが落ち着き始め、学習が意欲的になります。その結果として、学力が向上していく姿を目にして、ますます工夫をされていく先生方が増えてきています。ぜひ、子どもの実態にあったユニバーサルデザインの授業づくりと合理的配慮に挑戦してみてください。

(構成:佐藤)

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