- 著者インタビュー
- 授業全般
「変化する社会」とよく言われます。それに合わせることにのみ急で、「変えるべきではない基礎、基本」を忘れがちです。教育者は、とりわけ子どもと直接かかわる実践者は、常に教育の「根本、本質、原点」を自問しつつ歩むことが肝要です。原著が世に出て30年を経るのですが、改めて読み返してみても、私の実践や、そこから導いた理論は十分に現代に通用することを確認しました。若い教師各位の読後の感想をぜひ伺いたいと思います。
全般に話し方のスピードが速くなったように思います。相手の為に、言葉を選び、表情を読み、ゆっくりと話すという相手意識を持つことが大切です。本来の伝達という言語活動よりも、自分が言いたいことを言うという自己表現としての話し方の傾向が強くなっているようです。
学級崩壊という現象があります。その本質は、自分本位、自己中心の「表現」や「主張」に偏り、他者の話に耳を傾けるという「相手本位」の傾聴を軽んじる点にあるのではないかと私は考えています。
聞いて貰う為に話すのです。何よりも「相手中心」の「公的話法」になっているかを常に自問したいものです。自分中心の「私的話法」から脱する意識こそが、話術を高める要諦です。「私の話し方についてお気づきの点を教えてください」と同僚に問うのも一法です。また、授業を受ける子どもから、教師の話し方についての感想や注文を聞くことも有益です。授業の様子をビデオやレコーダーに記録をして、その再生を視聴することも大いに役立ちます。ぜひ、試みていただきたいです。
2つ目の回答と同じことになりますが、「相手中心」の話し方、「相手尊重」の話し方を心がけさせる必要がありましょう。「話したいように話す」「話したいことを話す」のではなく、「話すべきことを、聞きとり易く分かり易く話す」ように導きたいですね。また、「話し上手」よりも、むしろ「聞き上手」になるように心がけたいです。「正対、正視、頷き、笑顔」が「傾聴4項」である、と心得ましょう。聞き上手が良い話し手を育て、話し上手が良い聞き手を育てることになるからです。
人は朝から晩まで話したり、聞いたりしています。そのありふれた日常の言語活動をちょっとこだわって観察してみましょう。良い手本、悪い手本がいっぱいみつかる筈です。良い手本はまね、悪い点については改めたり、捨てたりしていけば、誰でも自然に話し方の名人になれる筈です。無意識、無自覚、無反省のままでは上質の言葉の使い手にはなれません。誰からも話しかけられ易いような教師になれば、教師人生の日々は限りなく楽しいものになることでしょう。教師人生を大いに楽しんでください。