- 著者インタビュー
「特別の教科 道徳」は、従来の「道徳の時間」の質的、量的転換を図っています。まず、何よりも授業時間の確保が大切です。地域や学校、教師間での格差を生まないための時間の保障と運営上の工夫が求められます。また、「考える道徳、議論する道徳」という言葉が象徴するように、教師主導の授業から児童生徒の主体的な思考による言語活動を中心に据えた授業への転換を目指しています。その実現ためには、発達段階を考慮した発問の工夫や柔軟な指導過程の構築等が期待されています。
授業づくりの基盤に「アクティブ・ラーニング」の考え方を据えています。特に、「深い学び」、「対話的な学び」、「主体的な学び」の視点は、道徳授業プロセスにおいても不可欠と考えています。それらを基本に道徳の特質を踏まえ、教師と児童生徒がアクティブに取り組む道徳授業を提案するのが「アクティブ・モラル・ラーニング」です。「アクティブ・モラル・ラーニング」は、児童生徒の道徳的価値を含む事象に対する多面的・多角的思考を促すとともに主体的に言語活動に参加できるよう多様で柔軟な授業を目指すものです。
アクティブの要件としては、以下の3つを重視しています。
@導入を工夫する(ICT、視聴覚教材等の補助資料、写真提示、調査結果、データ提示等)
Aペア、グループ、全体の話し合い活動を取り入れる
B教材、補助教材の提示を工夫する
また、児童生徒の興味関心の喚起、児童生徒の授業への参加、児童生徒の授業の学びの観点から、授業づくりのアクティブな取組を提案します。
掲載した実践の多くは、教材のストーリーを大切にした問題解決的な道徳授業であることが特徴です。どの実践も児童生徒を授業のステージに乗せるための導入の工夫、考え、議論するための発問づくり、各教科、他領域との関連を考慮した授業が提案されています。
中でも、終末でのゲストティーチャーの活用やワールド・カフェスタイルでの授業、保護者との連携により成立している実践などがお勧めです。
何よりも、
授業のねらい→思考課題(道徳的価値を含む最も考えさせたい場面)をもとに作る発問→授業の着地
までの児童生徒の思考の流れを大切にしつつ活用していただきたいと思います。子ども一人ひとりが、学びを実感できる道徳授業の創造を期待します。
今でも時々、小・中学校の現場で道徳授業をさせていただき楽しませてもらっています。子どもは教師の心もちに敏感に反応します。すべての子どもを受容し特定の型や価値観にはめることなく、子ども達との対話や子ども同士の対話を楽しみながら柔軟な姿勢で臨めばよいのではないでしょうか。独善に陥らないことが何よりです。そのための授業テクニックや補助教材のための引き出しを一つでも多く増やしましょう。