- 著者インタビュー
基本的には小学校と指導の内容が変わるわけではありませんが、思春期の発達段階を考えると、意図的に自分をふり返る時間を大切にしていることだと思います。中学校においては、生徒自身に課題があったときに、対処療法的に課題解決させるのではなく、自己理解を促しながら、考えて行動できるようにしていきます。単なるスキルのトレーニングだけでは、うまくいかないからです。また、卒業後の進路に向けて、教科の補充指導も必要になる場合があります。力は持っていても、試験のときに発達特性があるために、十分に力を発揮できないで、適切な評価を受けられなくなってしまうことがあるからです。中学校の通級指導教室では、適切な評価を受けられるような方法も一緒に考えていくことになります。
第1章は、通級指導教室を初めて設置した場合、もしくは初めて担当された場合に、教室運営を進めていく際に、なるべくこれだけは知っておいたほうが良いことを、Q&A形式でまとめてみました。
第2章は、この本のタイトルの通り、通級指導教室でどんな指導が実際に行われているのか、現在担当されている先生方やご経験のある先生方に、指導内容・方法についてわかりやすく書いていただきました。キーワードが書かれているので、目に留まったところからご覧ください。在籍学級との連携についてもふれてあります。
第3章は、今後の中学校通級指導教室のあり方について、課題と展望という形で書かれています。これから、中学校でもさらに通級指導教室の設置が進む可能性が高い中で、事前にわかっている課題を少しでも軽減して、生徒たちのためになる通級指導教室を設置していただければと思います。また、平成30年度からは高等学校にも設置ができるようになるので、是非担当される先生方の参考になればと思っています。
レシピ10の「外付けメモリーを活用して、自分の気持ちや考えを整理」です。外付けメモリーというのは、実はホワイトボードのことで、教師との対話の中で生徒の話したことを、そこに書き留めながら対話していくのです。自分の言葉が視覚化することで、その場面の自分の行動や周囲の状況理解が促されます。また、生徒がなかなか上手に表現できないときは、教師が語彙を補いながらアシストすることで、より理解が深まります。そうすると、自分の気持ちや考えが整理されて、次に同じような場面になったときに、適切な行動につながったりするのです。是非参考にしてみてください。
彼らは「困った生徒」ではなく、学校生活で苦戦している生徒であるということを理解して、まずはその生徒の相談役になってください。そして、本人の生きにくさをお互いに少しずつ理解して、適切な指導と必要な支援を提供してあげてください。さらに、在籍校や在籍学級との橋渡し役も務めていただいて、周囲の理解にも貢献していただけると、きっと生徒は変わるはずです。
将来、中学校の通級指導教室を利用できたから、自立と社会参加ができるようになったと言われるような指導・支援につながるようにとの願いを込めて、本書を編集しました。