著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
部分の磨き上げから全体の調和へ、学級集団づくりの発想の転換
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2017/2/8 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『教室がアクティブになる学級システム』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書・編著書に、
『クラスがまとまる! 協働力を高める活動づくり』『アクティブ・ラーニングで学び合う授業づくり』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』(小学校編・中学校編)『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』(小学校編・中学校編)『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『クラス会議入門』『スペシャリスト直伝!成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』(小学校編・中学校編)『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』(小学校編・中学校編)『やる気を引き出す全員参加の授業づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』(小学校編・中学校編)(以上、明治図書)などがある。

―本書はベストセラー「学級を最高のチームにする極意」シリーズの第11弾として、テーマは「教室がアクティブになる学級システム」です。本書のねらいと読み方について、教えてください。

 クラスは、係活動や当番活動などがばらばらに独立して機能するわけではありません。それぞれの活動が連動して学級を育てます。 いきいきとした活動性の高い学級集団を育てるためには、各活動を意図的に配置してデザインの質を上げることが大切です。
 本書は、「教室をアクティブにする上で大切な基本的な考え方」「学級づくりのグランドデザイン」「教室をアクティブに動かすコツ」の3つの観点からわかりやすく実践をまとめました。

―先生は本書の中で、学級づくりでは、それぞれ場当たり的な取り組みではなく、「子ども達にどんな力をつけたいか」を考えながら、つながりをもって継続的に取り組むことが大切、と述べれらています。この点について教えて下さい。

 学級集団の形成に必要な能力が形成されるときは、特定の活動のみでその力がつくとは考えにくいです。例えば、コミュニケーション能力や共感性などです。こうした総合的な能力は、様々な活動が有機的に連動して形成されていきます。また、数時間の活動で身につくようなものでもありません。ねらいを見据えて、様々な活動を組み合わせて継続的に取り組むことで、望ましい学級集団はつくられていきます。

―子どもたちに様々な活動の土台となる力を育てるには、子どもに任せながらの「トライ&エラー」が必要になりますが、教師(先生)はどのようにかかわるのがよいのでしょうか?

 「子どもたちに任せたい」と思っていても、それができないのが現状ではないでしょうか。しかし、実際は、子どもたちが失敗した場合の後に起こる様々なことを考えると任せきれないのが本音でしょう。
 最初のうちは、失敗しても大きなリスクが起こらない部分を見極めて任せることです。
@身体の危険が予期されない
A人間関係に重大な影響がある
B社会や学校のルールを逸脱するおそれがある
 こうした事態が予想されないときは、任せてみたらいかがでしょうか。

―「教室がアクティブになる」「子どもたちがアクティブに動く」ためには、子どもがクラスに「所属感」を持ち、「みんなのために」という意識も大切になってくると思います。このような意識(気持ち)を子どもに育てるには、どのような取り組みが必要(大切)でしょうか?

 子どもたちの活動性を高めるためには、教室が自分にとって居心地のいい空間になります。そのための第一条件は、安心感です。ひとり残らず安心感をもてるように配慮します。安心感が確保された子どもたちは、今度は、人の安心感をつくろうと行動し始めます。すると貢献的な活動がよく見られるようになります。活動的なクラスは、安心感で満たされたクラスだと言えます。

―子どもたちが取り組んだ活動を継続していくには、教師(先生)からの活動に対する言葉がけ、価値付けも大切になってくると思います。そのポイントについて教えて下さい。

 子どもたちが動き出したら、教師は「見守り」そして、「感謝を伝える」ことです。子どもたちの望ましい活動を、しっかりと貢献に結びつけて言語化したり、感情を伝えたりします。「ありがとう」「うれしいなあ」「みんながとっても喜んでいるね」などの言葉を、折に触れて気付いたときに、積極的に伝えていきます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 部分部分を磨き上げる学級集団づくりから、全体の調和を取りながら環境としての教室の質を上げようとする画期的な内容です。水槽の中に、立派な石をおいても、綺麗な水草をおいても魚は元気に泳ぎません。水槽全体の調和が大事なのです。学級集団づくりの発想が変わる書籍だと確信しています。

(構成:及川)

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