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学習指導要領改訂の動きの中で注目されてきた協働力ですが、子どもたちの協働力を育てる機会はけっして十分とは言えない状況です。しかし、協働力は社会人として必須の能力です。
本書は、協働力を育てるために日常の教育活動のなかでどのように仕組むことでそれを育てることができるのかという問いに答えるための実践を取りそろえました。
金大竜、生方 直、弥延浩史、近藤佳織、小野領一、松山康成、中條佳記、渡邉正博、飯村友和、浅野英樹、大谷啓介、久下 亘、倉澤秀典、海見 純、岡田敏哉、山本宏幸、吉田 聡、根平緯央、松井晃一、堀川真理、といった名だたる教師たちが実践を寄せています。
第1章は理論編で、協働力を育てる現代的意味を赤坂が述べました。
第2章は、上記の実践家たちが、
@協働力を高める基本的な考え方
A協働力を高めた成功実践モデル
B協働力育成の極意
を述べました。すぐに活用できる実用性の高いものになっています。
仲間の悩みやクラスの問題を力を合わせて解決できる集団です。しかし、よくまとまっているかというとそうではありません。普段はバラバラなことをしています。好きなことをしています。しかし、互いがそれを認め合っています。しかし、一人では解決できない問題に対して、協力をすることができます。互いの自由を承認し合いながらも協力ができる個人の独立性と集団の凝集性のバランスのいい集団です。
子どもたちが協働するためには、まず、協働の必要性を知らせることが必要です。多くの子どもたちにとっては力を合わせることはめんどくさいのです。教師が協働することの意味をしっかり伝え、ベクトルを示します。子どもたちが動き出したら、見守ることが必要です。いちいち口を出すとせっかくの子どもたちの動きを止めてしまいます。
大事なことは、活動が終わってからの教師のフィードバックです。子どもたちの貢献や努力など肯定的な姿を承認し、学級目標や人生の望ましい在り方に照らして価値付けます。子どもたちは、自分たちのやったことの意味を自覚したときに、やる気になります。
子どもたちが所属感や貢献感を持つためには、自分や他者を信頼することや自分が何かをできるといった有能感のようなものが必要です。そのためには、互いを認め合う活動や感謝を伝え合うような活動が有効です。互いのいいとこ探し的な活動もいいですが、互いの悩みを解決し合ったりクラスの問題を解決し合ったりするなかで、互いの存在に感謝し合えるような場を設定することが大事です。
どれも魅力的な活動で選ぶのに迷います。小学校編で手軽に効果が高そうな実践としては、中條佳記氏の「なんでも・なんども・シェアタイム」(P.96)が挙げられます。今の教室には、集団を維持するだけのコミュニケーション量が足りないクラスが見られます。子ども同士のおしゃべりをシステム化する試みはとてもクラスのまとまりをつくり出すことにとても有効です。
また、中学校編では久下亘氏の「チームミーティング」(P.39)は、行事を有効活用する手段として実用性が高いです。体育祭や音楽祭は多くの中学校で必ず取り組まれます。絶好の集団づくりのチャンスです。少しの時間を確保するだけで、高い効果が期待できます。
活動そのものではありませんが、小学校編、飯村友和氏のタイトル「進むべき道を明らかにし、お互いのことを知り合うことで協働力は高まる!」(P.116)は、こうした活動の成功の鉄則を端的に言い表しています。
協働力、つまり、対等参加による他者と協力する能力は、社会人として必須の力です。協働力は子ども個人にとっては「幸せになる力」であり、クラスにとっては集団の「正常性のバロメーター」です。つまり、よいクラス、実力のあるクラスは、協働力が高いのです。他者と協力するすばらしさ、よさを知った子どもたちは人生を協力的に築いていくことでしょう。そんな人生をつくる力を育てる機会を子どもたちに提供するための実践的アイディア集です。