- 著者インタビュー
- 学級経営
以前から、中学校の学級集団づくりの書籍がほしいというニーズはあったと思います。そして、それらは実際にありました。しかし、どちらかというと学級集団づくりというよりも、生徒指導や教育相談にかかわる内容でした。多様化する生徒の実態に応じて学級集団づくりのニーズはますます高まってきています。また、高等学校においては、学級経営に関心を向ける教師は少数派だったと思いますが、次期学習指導要領に向けた議論のなかでニーズが高まってきたようです。主体的・対話的で深い学びを実現するには、学級集団づくりをしっかりやらなければならないという認識に至ったのではないでしょうか。
高まりを見せる中学校、高等学校の学級集団づくりへのニーズにお応えするために、岡田敏哉、久下亘、海見純、片桐史裕ら実践経験の豊富な教師たちと本書をまとめさせていただきました。第1章は理論編で、協働力を育てる現代的意味を赤坂が述べました。
一つの理由は、やはり大きな話題となった「アクティブ・ラーニング」の導入があるでしょう。国が、今での一斉講義型の授業を脱して、生徒が話し合い、考えを交流させ、互いの意見をアウトプットし合う学習に変換を求めたわけです。それを実現するためには、やはり、学習の基盤である学級が安定していること、安心できる人間関係があることが求められることに多くの方が気付いたのだと思います。
また、一方で、生徒の多様化があろうかと思います。生徒の生活が多様化し、様々なニーズをもった生徒が一つの場所に集まるわけですから、そうした「利害のコーディネート力」というのが従来よりも格段に必要となって来ています。
自動車が安定走行をするためには、定期点検が必要です。学力は、定期的に試験をします。しかし、その基盤である学級集団の状態は、チェックがおろそかになっていることがあります。基盤が揺らげば、授業も当然揺らぐわけです。
安定した学級生活のためには、学級集団づくりも定期的にチェックが必要です。最終章に示したチェックポイントを使って、約2ヶ月ごとのチェックをお勧めします。授業計画を立てるように、学級集団の取り組みの評価も標準装備をしておくわけです。ある学校改善に成功している学校は、この20ポイントを学年会などで使用して互いの学級集団づくりを振り返っていると聞いています。
生徒は学校の教育活動のすべてに納得して取り組んでいるわけではありません。主体性が引き出されるには、納得が必要です。活動の導入時では、教師からの働きかけから始まります。生徒の納得感を高めるのは、教師との信頼関係の強さです。子どもたちの主体性は教師との信頼関係から導き出されます。
また、対話は思考の交流です。信頼関係のないところに思考の交流は起こりません。従って、主体性を保証し、対話が可能が学級には、信頼関係づくりが必須です。本書には、教師と生徒、生徒同士の信頼関係をつくるためのアイディアが豊富に示されています。
次期学習指導要領は、小中高校と一貫した学級経営、ホームルームの充実を求めています。これは学びの質が問われる時代に入ったということです。何を学んだかと同時に、どのように学んだかが大事になってくるということです。中学校は中学校でうまくやる生徒、そして、高校は高校でうまくやる生徒を育てることが目的ではないことは言うまでもありません。社会人として世の中をつくっていく力をつけることが生徒の幸せにつながることでしょう。
学級集団は、人生に必要な社会的能力や倫理的能力を身につけるための絶好の場です。生徒たちの感動や汗や情熱などの陰には、教師の冷静な分析としたたかな戦略があるのです。学級担任としてのみなさんを応援し続ける書籍となっております。どうぞご活用ください。