- 著者インタビュー
- 国語
「国語科を実技教科にしたい」と思って、取り組んできた中学校での実践をみなさんに知っていただければという思いです。私は、大学の恩師から「授業は、子どもの事実から作るもんだ」と指導されてきました。子どもの事実とは、子どもの興味や要求や学力のレベルなどだと思っています。そこから、授業を作っていく問題解決型の授業づくりを見ていただければなあと思います。
国語は、私が現場にいた頃の学習指導要領では、「話す・聞く」「読む」「書く」の領域と、「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」の事項で構成されていました。つまり、言葉を土台にして言葉の活動がありますよってことですね。ところが、国語の授業では、文章を読む活動はさせても、それ以外の活動は教師が説明して終わりということが多くありました。
水泳で、平泳ぎの泳ぎ方を教師が説明するだけで、子どもたちは泳げるようになるでしょうか? 調理実習でカレーライスの作り方を説明されただけで、作れてしまうでしょうか? そんなことはありませんよね。実際にやっていく中でできるようになるわけです。
しかし、国語ではそれが行われているのではないでしょうか。そうだとしたら、生徒たちができるようになるとは思いにくいです。できるのは、教えなくても元々できる生徒でしょう。
簡単にやり方を説明して、それをどんどんやる。そして、できるように育てる。中学校を卒業したら、「話す・聞く」「読む」「書く」ができるようになっている。そのためには、実際にやる「国語科を実技教科に」する授業というのが一番だと考えていました。
教師が説明を続けて、生徒はその内容を暗記して、それをテストで思い出して書くといい成績がとれるというのも、確かに国語の授業の一つかもしれませんが、それは知識や正解を教師の側が独占できていた時代のこと。今は違うでしょう。自分たちで現状から問題点を見つけ、それを課題にして解決していく学び方が必要になります。しかし、まあ、それを正面からやっても面白くない。
日本の国語、というか、文学には伝統的にみんなで遊ぶというものがあります。松尾芭蕉さんの「座の文学」ですね。みんなでワイワイやりながら、一つの作品を作っていくというものです。本書では、句会やディベート、さらには「書き込み回覧作文」などの実践を載せていますが、これらのルーツは「座の文学」にあると思っています。「座の文学」で、遊びながら面白がりながら、国語の力をつけていく。学習ゲームという概念もここで活用しています。
せっかく、学校には集団で学ぶ環境が用意されています。遊ぶことは主体的ですし、ワイワイやるってのは対話的(^^)。そういうのでいいんじゃないかなあと思っています。
「連載」とは、帯単元のことです。まあ、今風に言うとモジュールですかねえ。私は授業の導入でほとんど毎回、詩、短歌、俳句や名言を黒板に書いて、「アンソロジーノート」というノートに書き写させていました。まあ、硬筆の書写ですね。細切れにして膨大な知識を与えたいことがあるといいですね。
「定番」とは、その教師がやりたいこと、得意なこと。生徒にとって必要なことの授業です。教師になったからには、生徒たちに教えたいというものがあると思います。それをしっかりやりましょうってことです。教師の深い専門性に基づいた授業をすることは、子どもたちにはとても幸せなことです。
「新規開拓」とは、やったことのない授業を作るということです。まあ、正直言うと、同じことを何回もやっていると飽きてくることがあります(^^)。それを乗り越えるために、毎年1つ、今までにやったことのない授業に挑戦していました。ディベート指導もそうでした。これは、結果的に飽きないだけでなく、自分の「定番」を増やすことにもつながりましたし、教師が新しいことに挑戦している姿を子どもたちが見ることは、国語の授業づくりということだけでなく、教育的な価値もあると思います。
最初に戻るのですが、「授業は、子どもの事実から作るもんだ」ですね。彼らの興味と要求を大事にします。そして、それは学習指導要領のどこにリンクしているのかを調べます。その上で、生徒たちが好きなゲームの力を借りて、そうです、ゲーミフィケーションを活用して作っていくということが多かったですね。
極論ですが、人間は自分が必要と思ったものと興味があることしかやらない。勉強で必要性を感じさせるのは、なかなか難しい。だとすれば、あとは興味に頼るしかないですねえ。
あ、そのためにはもう一つ、教師がたくさんの知識や情報を体に仕込んでおくことが大事です。入っているものを生徒の興味の視点で見つめてみて、それを組み合わせていくってことです。入っていないものは、組み合わせることはできませんからね。
「へー、国語ってこんな風にもできるんだ。面白いなあ」
「全部は無理でも、ここは私もやってみたいなあ」
「これは、明日の授業でやっていたい」
という感想を読後に持ってもらえるといいなあと思いながら、19年間分の実践をすべて書きました。お手にとって読んでいただけると嬉しいです。