著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「深い学び」を意識した独創的な社会科授業プラン
広島大学大学院教育学研究科教授小原 友行
2017/3/8 掲載
 今回は小原友行先生に、新刊『アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校社会科の授業プラン』について伺いました。

小原 友行こばら ともゆき

1951年広島県生まれ。広島大学教育学部高等学校教員養成課程社会科卒業。広島大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士課程前期・後期修了。高知大学教育学部助手、同助教授、広島大学学校教育学部助教授、同教授などを経て、現在は同大学院教育学研究科教授。博士(教育学)。
主な著書・編著書に、『アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校社会科の授業プラン』『「思考力・判断力・表現力」をつける中学地理授業モデル』『「思考力・判断力・表現力」をつける中学歴史授業モデル』『「思考力・判断力・表現力」をつける中学公民授業モデル』『「思考力・判断力・表現力」をつける社会科授業デザイン』(小学校編・中学校編)(以上、明治図書)などがある。

―本書は「アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校授業プラン」シリーズの社会科編として、授業デザインの基本的な考え方に加え、「主体的・対話的で深い学び」とのかかわりがよく分かるアクティブ・ラーニングの授業プラン、評価の考え方までが、豊富に紹介されています。まず、本書のねらいと読み方について教えてください。

 本書のねらいは、大きく次の3点です。@「主体的・対話的で深い学び」(「アクティブ・ラーニング」)を取り入れた小学校社会科授業デザインの基本的な考え方を提案すること、A基本的な考え方に基づいて、第3・4学年、第5学年、第6学年の「アクティブ・ラーニング」型の代表的な小単元を開発すること、そしてB「アクティブ・ラーニング」を位置づけた社会科学習の評価方法を提案することです。

―先日答申・新学習指導要領案が出ましたが、「見方・考え方」が重要なキーワードの一つとなり、目標にも反映されています。これからの授業づくりの上で、どのように考えていけばよいでしょうか?

 「見方・考え方」については、課題解決的な学習における社会的事象の意味・意義や特色や相互の関連を考察したり、課題を把握して解決に向けて構想したりする際の「追究の視点や方法」と定義されています。このような定義を踏まえると、これからの授業づくりにおいては、追究する学習問題を、「どのように、どのような」という問いから、思考を求める「なぜ、どうして」や判断を求める「どうしたらよいか、どの解決策がより望ましいか」へと転換することが必要となるのではないでしょうか。

―本書には「農家の課題を克服する『プロジェクトX』を考えよう」など、子どもが興味をもちそうな魅力的な授業プランが豊富に収録されていますが、「主体的・対話的で深い学び」を実現する上で、魅力的な教材づくり・授業づくりのポイントは何でしょうか?

 「主体的・対話的で深い学び」を実現する魅力的な教材づくり・授業づくりのポイントは、次の3点です。第1は、「深い学び」とするためにも、「なぜ、どうして」「どうしたらよいか、どの解決策がより望ましいか」という問いが生まれるような教材・学習材を開発することです。第2は、小単元の学習過程を、教材との出会い→学習問題の発見→学習問題の追究→学習問題の解決とその表現というように組織することです。そして第3は、主体的・対話的な学習形態・学習活動を選択することです。

―第3章の評価の項目にもまとめられていますが、これからのポイントとも言える「子供の社会認識のとらえ」はどのように伸ばし、評価していけばよいものでしょうか?

 子供たちの社会的な見方・考え方の成長を引き出す指導法と一体となった評価法の開発が求められていると考えます。例えば、「思考力・判断力・表現力等」や、「関心・意欲・態度」に代わる新しい観点と考えられる「学びに向かう力、人間性等」を測定できるような評価問題や評価方法は、それ自身が見方・考え方を伸ばす指導法と考えることができます。ポートフォリオ評価やパフォーマンス評価がこれまでは取り上げられてきましたが、本書を手がかりに「主体的・対話的で深い学び」を反映した新たな評価方法の開発を期待します。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 本書は、2016年7月刊行の『アクティブ・ラーニングを位置づけた中学校社会科の授業プラン』の姉妹編となるものです。両書を通して、発達段階に応じた「アクティブ・ラーニング」型の小・中学校社会科学習の系統も感じていただければ幸いです。なお、本書では、地域の社会科研究会をリードしている教員の皆さんを中心に人選を行い、独創的な授業プランを作成してもらった自信作です。是非、ご活用いただければ幸いです。

(構成:及川)

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