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実践事例の執筆は、私が2011年から取り組んでいる主権者教育プログラム開発研究のメンバーや、その研究を通して知り合った先生方にお願いをしました。総務省と文部科学省によって作成された主権者教育副教材の作成に関わられた方にも、執筆をお願いしています。掲載されている事例は、長年の教育現場での経験や社会科教育研究の成果に基づくものであることはもちろんのこと、実践を経てその効果が実証されているものです。
4つのSTEPは、生徒や学校の実態に応じて最も取り組み易い実践を各学校が選択できるように設定しました。基本的な知識を重視しつつ教科の授業をよりアクティブなものに改善していきたいという場合はSTEP1や2の実践を、教科と教科以外の特別活動等との連携や、地域社会や学校外の団体とのつながりを活かして主権者教育を展開していこうという場合はSTEP3や4の実践を参考にされるとよいと思います。各学校が負担感なく主権者教育に取り組めるようになることがねらいです。
政治的中立性の確保をはじめ、主権者教育の実施に関してはいろいろと制約が多いと感じている先生も多いと思います。しかし、主権者教育においてどのような教材を、いかに取り上げるかといったこと等は、すべて多様な見方・考え方を育てるという目標に基づいて判断されるべきもので、この点は従来の社会科や公民科と変わりはありません。主権者教育は教育改善に向けた視点であり、学校教育を見直すきっかけなのです。3章の回答を参考にして、ぜひ新しい取り組みにチャレンジしてもらいたいと思っています。
育成すべき資質・能力をふまえて教育目標や内容、そして評価のあり方を検討することが求められています。主権者教育を実施するうえでも、それぞれの学校段階において主権者としてどのような資質・能力を身に付けさせるか、そして、最終的には18歳で選挙権を得たときに、どのような資質・能力が身に付いていればよいかということについて、見通もつことが必要です。これらは、地域社会と連携して進める必要がありますので、主権者教育にとって開かれた教育課程の実現は欠かせません。
主権者育成は、従来から学校教育に求められていたものです。主権者教育の推進とは、主権者を育成するという視点から教科やそれ以外の学校の教育活動のあり方を見直して改善していくということで、決して子どもや先生に新たな負担を求めるものではありません。試験や進学といった目標だけではなく、社会で活躍できる主権者になるためには何が必要かというところから、日々の教育活動を点検する際の手掛かりとして本書をぜひ活用してください。