- 著者インタビュー
- 授業全般
本書は、授業をアクティブにするアイディアを小学校の各学年別に一年分収めるという贅沢なつくりになっています。しかし、単なるネタ集ではありません。それぞれの担当が、アクティブな状態をどうとらえるかという理念に基づいた実践を紹介しています。また、実際の授業を、子どもとの、また、子ども同士のやりとりを再現し、授業の様子がありありとイメージできるようになっています。そして、教材や題材はあくまでも例ですので、それらが変わっても活動自体は応用が可能になっています。先生方の使いやすさにフォーカスしたとても実用性の高い構成です。
1年生を阿部隆幸、2年生を浅野英樹、3年生を生方直、4年生を阿部琢郎、5年生を松山康成、6年生を佐藤翔の研究的に実践を高めてきた6氏が実践を惜しみなく紹介してくれています。
アクティブな学びを実現するためには、教師の介入を極力排除することが必要です。教師が学習過程に手を出し、口を出せば出すほど,子どもたちの活動性は落ちていきます。だからといって、放っておいても動き出さないでしょうし、また、ねらいと外れた方向に行ってしまう可能性もあるでしょう。子どもたちの活動性を高めるには、活動の意味を伝えること、そして、活動の見通しをもたせることです。子どもたちは、意味のわからないことややり方のわからないことには取り組みたくないのです。他にも子どもたちの活動性を高めるポイントがたくさん示してあります。
授業改善の視点で最も大事なことは、深い学びに到達することだと考えています。しかし、それが生きる力となるためには、主体的な学びや対話的な学びが必要なのです。したがって、1年間では、3学期に向かって、そして6年間では、学年が上がるにしたがって主体性を高めることが、より機能的な対話を可能にし、より深い学びを実現することでしょう。活動の質が高度化していることがわかります。しかし、そこには、主体性を引き出す工夫が実に周到になされていることがわかります。
題材でひきつけようとすると、題材が変わると学ばなくなる可能性があります。本書は、題材でひきつけ、子どもの意欲を喚起させるというアプローチをとりません。もちろん、一つ一つの実践を見るとそれぞれ題材の工夫はなされています。しかし、本書で育てたい子どもたちは、題材が変わっても継続的に学習に取り組める子どもたちなのです。それを教材づくりと呼ぶのかはわかりません。各執筆者がやっているのは、育てたい子ども像に照らし合わせて単元や題材を見つめ、それを使ってねらいを達成するための活動を構想することです。豊富な方法論を紹介していますが、彼らが伝えているのは、ねらいを達成する通り道のあり方です。
子どもたちの活動の質は、評価の質が決めると言っても過言ではありません。活動させっぱなしは最もよくありません。先ほどもふれましたが、活動前のインストラクションで意味と見通しを知らせること、活動のイメージをもたせること、そして、活動が始まったら、望ましい活動をしている子どもたちの行動を周囲に知らせたり、活動が終わってから、様子を描写しながらなぜそれが適切なのか意味付けることが大事です。詳しくは実践例をお読みください。
本書を編集していて、正直言ってワクワクしました。自分が今、小学校で教えていたらすぐに取り組みたいものばかりです。子どもたちがアクティブに学ぶか学ばないかの答えは、もうみなさんの頭の中にあります。アクティブに学んでいる姿を想定している方は、そのための準備を4月からしていくことでしょう。本書は、そんなときにとても役立つ情報源になるはずです。みなさんの授業が、子どもたちの笑顔と、そして真剣に学ぶ姿で溢れるための一助となれば幸いです。