著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
いつでも始められる、授業をアクティブにする小学校全学年の365日のアイディア
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2017/3/17 掲載
 今回は赤坂真二先生に、小学校1年〜6年の学年別にアクティブな授業づくりについてまとめた新シリーズ、『授業をアクティブにする!365日の工夫』シリーズについて伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書・編著書に、
『スペシャリスト直伝! 主体性とやる気を引き出す学級づくりの極意』『クラスがまとまる! 協働力を高める活動づくり』『教室がアクティブになる学級システム』『学級を最高のチームにする! 365日の集団づくりシリーズ』(小学校・中学校・高等学校)、『アクティブ・ラーニングで学び合う授業づくり』『スペシャリスト直伝! 学級づくり成功の極意』『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『自ら向上する子どもを育てる学級づくり 成功する自治的集団へのアプローチ』『クラス会議入門』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『気になる子を伸ばす指導 成功する教師の考え方とワザ』『スペシャリスト直伝! 成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『信頼感で子どもとつながる学級づくり 協働を引き出す教師のリーダーシップ』『集団をつくるルールと指導 失敗しない定着のための心得』『やる気を引き出す全員参加の授業づくり』(以上、明治図書)などがある。

―このシリーズは、新しい学習指導要領で目指されている「主体的・対話的で深い学び」、いわゆるアクティブ・ラーニングを実現する365日の授業づくりについて、1〜6年の学年別にまとめたものになっています。本書のねらいと読み方について教えてください。

 本書は、授業をアクティブにするアイディアを小学校の各学年別に一年分収めるという贅沢なつくりになっています。しかし、単なるネタ集ではありません。それぞれの担当が、アクティブな状態をどうとらえるかという理念に基づいた実践を紹介しています。また、実際の授業を、子どもとの、また、子ども同士のやりとりを再現し、授業の様子がありありとイメージできるようになっています。そして、教材や題材はあくまでも例ですので、それらが変わっても活動自体は応用が可能になっています。先生方の使いやすさにフォーカスしたとても実用性の高い構成です。
 1年生を阿部隆幸、2年生を浅野英樹、3年生を生方直、4年生を阿部琢郎、5年生を松山康成、6年生を佐藤翔の研究的に実践を高めてきた6氏が実践を惜しみなく紹介してくれています。

―このシリーズでは、「主体的・対話的で深い学び」について、一過性の“非日常”のものではなく、365日の授業づくりに工夫をし、「日常的にアクティブに学ぶ」工夫が豊富に紹介されているように思います。各教科においてアクティブな学びを実現する上で、「ここをおさえておきたい」というポイントがあれば教えてください。

 アクティブな学びを実現するためには、教師の介入を極力排除することが必要です。教師が学習過程に手を出し、口を出せば出すほど,子どもたちの活動性は落ちていきます。だからといって、放っておいても動き出さないでしょうし、また、ねらいと外れた方向に行ってしまう可能性もあるでしょう。子どもたちの活動性を高めるには、活動の意味を伝えること、そして、活動の見通しをもたせることです。子どもたちは、意味のわからないことややり方のわからないことには取り組みたくないのです。他にも子どもたちの活動性を高めるポイントがたくさん示してあります。

―このシリーズは学年別に、1学期から3学期、それぞれの段階において有効な授業モデルが豊富に紹介されていますが、各学年のそれぞれの発達段階において、一学年のそれぞれの学期の中で、また教科の内容によっても、「主体的・対話的で深い学び」のあり方も違ってくるように思います。どのようにとらえていけばよいでしょうか。

 授業改善の視点で最も大事なことは、深い学びに到達することだと考えています。しかし、それが生きる力となるためには、主体的な学びや対話的な学びが必要なのです。したがって、1年間では、3学期に向かって、そして6年間では、学年が上がるにしたがって主体性を高めることが、より機能的な対話を可能にし、より深い学びを実現することでしょう。活動の質が高度化していることがわかります。しかし、そこには、主体性を引き出す工夫が実に周到になされていることがわかります。

―子どもたちが「アクティブに学ぶ」ためには、その題材や形式が、子どもの意欲をひきつけ、興味を持続させるものである必要がありますが、その教材づくりのポイントがあれば教えてください。

 題材でひきつけようとすると、題材が変わると学ばなくなる可能性があります。本書は、題材でひきつけ、子どもの意欲を喚起させるというアプローチをとりません。もちろん、一つ一つの実践を見るとそれぞれ題材の工夫はなされています。しかし、本書で育てたい子どもたちは、題材が変わっても継続的に学習に取り組める子どもたちなのです。それを教材づくりと呼ぶのかはわかりません。各執筆者がやっているのは、育てたい子ども像に照らし合わせて単元や題材を見つめ、それを使ってねらいを達成するための活動を構想することです。豊富な方法論を紹介していますが、彼らが伝えているのは、ねらいを達成する通り道のあり方です。

―本書の授業モデルでは、教師と子どもの具体的な対話場面が収録されています。子どもがアクティブに学ぶためには、教師の言葉がけやアプローチ、まとめ方や評価(子どもの育ちのとらえ)なども重要なポイントになってくると思います。どのような意識・取り組みが必要でしょうか。

 子どもたちの活動の質は、評価の質が決めると言っても過言ではありません。活動させっぱなしは最もよくありません。先ほどもふれましたが、活動前のインストラクションで意味と見通しを知らせること、活動のイメージをもたせること、そして、活動が始まったら、望ましい活動をしている子どもたちの行動を周囲に知らせたり、活動が終わってから、様子を描写しながらなぜそれが適切なのか意味付けることが大事です。詳しくは実践例をお読みください。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 本書を編集していて、正直言ってワクワクしました。自分が今、小学校で教えていたらすぐに取り組みたいものばかりです。子どもたちがアクティブに学ぶか学ばないかの答えは、もうみなさんの頭の中にあります。アクティブに学んでいる姿を想定している方は、そのための準備を4月からしていくことでしょう。本書は、そんなときにとても役立つ情報源になるはずです。みなさんの授業が、子どもたちの笑顔と、そして真剣に学ぶ姿で溢れるための一助となれば幸いです。

(構成:及川)

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