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私たちの授業の中心部分である英文法指導を、アクティブ・ラーニングの視点(主体性、協働性)で見直してみると、どのような形で授業が展開していくのかを示したのが本書のアクティビティやワークとなります。今までの教師対生徒の授業から、生徒同士が学び合う形態を文法指導ではどのようにすれば可能になるのかを本書では提案しています。一方、前著『目指せ!英語授業の達人34 絶対成功する!アクティブ・ラーニングの授業づくりアイデアブック』)では、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善の方法を提示しました。その際、どうしても文法指導について広く紹介できなかったので、本書の執筆に至りました。
理論と実践は融合されるべきだと思っています。私たちは日々、授業実践を行っていますが、おそらくそのほとんどは、経験則に基づいた方法であり、同時に、(ほぼ)理にかなった方法であると思っています。ただ、その理にかなっているのかいないのかは、実験や研究成果と合わせてみると、見えてきます。第二言語習得理論では、インプットしたものを「気づき」「理解し」「内在化」そして「統合」というプロセスを経て、アウトプットにつなげます。考えてみると私たちの授業も、導入で例文などを「聞かせ」(インプット)→新文型に「気づかせ」→「理解させ」→そして新文型の「練習」(内在化)→さらに、実際に自由自在に「使わせてみる」(統合)というプロセスをたどりながら、表現力というアウトプットの力を育てているのではないでしょうか。そう考えると、経験則も大事ですが、理論上、明確になっている研究成果を授業実践と比べていくことも必要なのではないかと考えます。同時に、教師の授業実践の自信にもなります。
アクティブ・ラーニングの中心的なキーワードは「主体性」と「協働性」であると思っています。生徒の自ら学習する姿勢と仲間とともに課題を解決する姿勢は、あらゆる場面で目指すべきことです。次期学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」(いわゆるアクティブ・ラーニング)の実現が、全教科で求められます。今までの授業をアクティブ・ラーニングの視点で考え、導入、展開、まとめ、活用、家庭学習、板書での場面など、あらゆる場面で見直せると思ったからです。ぜひ、先生方には、あらゆる場面でのアクティブ・ラーニングの視点で見つめなおしてもらいたいと思います。
やはり一番目は、「主体性」です。「やらされている学習」から、自分から「する学習」へ向かわせたいものです。授業をしていると、時々、辞書を引いている生徒を目にします。辞書を引きなさいと言ったわけではないのに、自分から引いているのです。きっと、意味のわからない単語があったのでしょう。これは自分から問題意識を持ち、自分から「する学習」を行っている姿勢と考えられます。私が新任教師の時、先輩教師から、『学校は何するところだ?』と問われました。私が『勉強するところです』という旨の返答したところ、『いや違う。学校は、勉強をしに来るところではない。勉強は家でやるんだ。学校は、勉強の仕方を教えるところなんだよ』と教えていただきました。学び方を教えることの大切さを学んだ記憶があります。それ以降、音読でも単語練習でも、自学ノートでも、どのような練習方法があるのか実際に授業で行うなど、学び方を教えるようになりました。
私は今までよりよい授業をしたいと思い、各種英語セミナーに自費で参加したり、教育書などを読んでアイデアを得たりして、授業に工夫や改善を加えてきました。しかし、なにより私にとっての大きな研修は、「学習指導要領」を読むことです。70ページほどの「中学校学習指導要領解説 外国語編」に、まだまだ解決できていない事柄がたくさんあるのです。例えば、現行の学習指導要領では、話すことに
つなぎ言葉を用いるなどのいろいろな工夫をして話を続けること。
とあります。となると、私たちは、つなぎ言葉を用いるなどして、話を続けさせる授業をしなくてはいけないということになります。また、次期学習指導要領では、書くことに、
ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて、考えたことや感じたこと、その理由などを、簡単な語句や文を用いて書くことができるようにする。
とあります。すると、聞いたり読んだりしたことについて、自分の考えや感じたこと、理由などを書かせる授業をしていかなくてはいけません。学習指導要領を研究するだけでも、多くの課題が見つかり、授業改善につながるはずです。ぜひ、熟読し、内容を整理し、よい課題を与えられたと思い、授業実践に活かしてもらえたらと思います。