著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
新学習指導要領が目指す主体的・対話的で深い学びを実現する授業づくりを考えよう
東京学芸大学准教授中村 和弘
2017/4/21 掲載
 今回は中村和弘先生に、新刊『アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校国語科の授業プラン』について伺いました。

中村 和弘なかむら かずひろ

東京学芸大学准教授。1971年,愛知県生まれ。東京学芸大学卒業,同大学院教育学研究科修了。川崎市内の公立小学校教諭,東京学芸大学附属世田谷小学校教諭を経て,現職。2015年より,中央教育審議会教育課程部会国語ワーキンググループ専門委員,同言語能力の向上に関する特別チーム専門委員として,国語科の学習指導要領改訂の審議に携わる。専門は国語科教育学,語彙教育論。

―書名にある「アクティブ・ラーニング」は、新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」となり、授業改善の視点としての重要性が示されています。新指導要領が目指す授業に向けて、本書はどのように活用できるでしょうか。

 工夫された授業には、必ずどこかに子どもに「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」を促す手立てが用意されています。国語科で大切なのは、そうした工夫を指導計画などに意図的に位置づけて、言語活動の充実を図るということです。本書では、小学校の国語科に特化して、「主体的・対話的で深い学び」を位置づけた授業や評価の必要性を分かりやすく解説し、事例を紹介しました。「だから、この三つの学びが求められているのか」「こういう実践の工夫もできるのか」と、日々の国語の授業づくりにつなげて活用できると思います。

―第2章では主体的・対話的で深い学びを実現する授業事例が紹介されていますが、どのような構成になっていますか。

 事例は18本あり、低学年、中学年、高学年ごとに、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「言語文化」の領域別ごとに紹介しています。教科書教材を使っているもの、年間の帯単元として取り組んだもの、オリジナルな題材を開発したものまで、バリエーションに富んでいます。それぞれの事例には、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の三つの学びのどこに重点を置いて工夫しているのかが、一目で分かる表がついています。また、事例ごとに主体的・対話的で深い学びの授業づくりのポイントはどこかを、コンパクトに解説しました。

―第3章で触れられている評価の工夫についてはどのように活用できるでしょうか。

 評価には、「子どもの学びをとらえる評価」「授業のあり方をとらえる評価」とがあります。前者は、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の三つの視点から、子どもの学びをとらえるポイントや記録の方法を紹介しています。特別な準備などは必要なく、「ああ、そういう観点からとらえられるのか」という感じで、取り組めると思います。後者は、とらえた子どもの学びを授業改善にどう生かしていくかということで、ネクストプランを考えるという発想で協議会などに活かせると思います。

―資質・能力の柱で整理された新学習指導要領が3月に告示されました。全面実施までの2年間、現場ではどのような視点で国語授業を行っていけばいいでしょうか。先生のお考えを教えてください。

 29年度に周知、30年度より移行というスケジュールですので、まず今年度の1学期は、告示文を読んだり、教育誌の特集などを手がかりに校内で学び合ったりするとよいと思います。夏には、「解説」が出ますので、伝達講習などの研修会や各種の研究会などで理解を深めます。そして、2学期には校内や地域の国語研究会などで具体的な授業開発に取り組み、3学期には30年度の移行に向けての検討を進めます。東京学芸大学でも夏休みや春休みに公開講座や附属学校でのセミナーを計画しています。

―最後に、日々、国語授業の改善に取り組む先生方へ一言お願いいたします。

 国語科における言語活動の充実は、子どもにとっての言葉の学びの充実として実現するものです。「今日の国語の授業はよく考えたなあ」「こんなおもしろい発見があったなあ」「こんなことができるようになってきて嬉しいなあ」と、子どもが実感できるような授業を、新学習指導要領の実施の流れの中で、先生方と一緒に考えていきたいと思います。

(構成:木山)
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