著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
コンテンツベースからコンピテンシーベースへ 学習指導要領改訂の本質を探る
国立教育政策研究所 初等中等教育研究部長大杉 昭英
2017/5/12 掲載
  • 著者インタビュー
  • 学習指導要領・教育課程
 今回は編者としておまとめいただいた大杉昭英先生に、新刊『平成29年版 中学校学習指導要領 全文と改訂のピンポイント解説』について伺いました。

大杉 昭英おおすぎ あきひで

1953年広島県生まれ。文部省初等中等教育局中学校課・高等学校課調査官、文部科学省初等中等教育局視学官、岐阜大学教育学部教授を経て、国立教育政策研究所初等中等教育研究部長(執筆時)。
主な著書に、『平成28年版 中央教育審議会答申 全文と読み解き解説』『アクティブ・ラーニング 授業改革のマスターキー』『中学校学習指導要領の展開 総則編(平成20年版)』『平成20年版中学校学習指導要領 全文と改訂のピンポイント解説』『平成21年版高等学校学習指導要領 改訂のピンポイント解説』(以上、明治図書)などがある。

―本書は、3月31日に告示された次期中学校学習指導要領について、全文を掲載するとともに、各教科のキーマンでいらっしゃる専門の先生方に、解説していただいた書籍です。まず本書のねらいと読み方について教えてください。

 本書は新中学校学習指導要領の内容をわかりやすく読み解くために活用していただくことをねらいとしています。そのため、一次資料として学習指導要領全文を提示し、その後に、総則をはじめ各教科等を読み解くための枠組み、ポイントを示しています。
 枠組み・ポイントを見た後で一次資料たる学習指導要領を読み解いてもよいし、逆の読み方でもよいと思います。

―先生は「本書のねらい」で、今回の改訂の最大のポイントをあえて絞るとすれば、「資質・能力の育成」と「社会に開かれた教育課程の実現」だと述べられています。求められるようになった背景と、これからの学校現場での取り組みポイントについて教えて下さい。

 今日、知識基盤社会、AIの発達、グローバル化の進展など社会変化が著しくなっています。そして、このような変化に対応していくためには能力を重視した教育改革が必要であるという考え方が世界的な潮流となっているのです。その要点は、知識・技能を使いこなす能力が重要であり、かつ、実際の社会で活用できるようになることです。それゆえ社会に開かれた教育課程の実現が求められているのです。受業づくりにおいては、教科書にある知識が社会生活とどうつながっているかを念頭に指導することが大切になります。

―改訂キーワードの一つに「カリキュラム・マネジメント」という言葉があります。どのようなことがポイントになるのでしょうか。

 今回示されたカリキュラム・マネジメントのポイントは、教科横断的な視点に立って、学校教育目標の実現のため教育内容の配列を最適化することだと考えます。つまり、各教科等で学んだことが実際の社会で役立たせることができるように、知識・技能のつながりを考えて、学校の教育計画を検討していく必要があります。そのため、これまで以上に総合的な学習の時間の役割が重要になると考えます。

―授業づくりのキーワードとしては、「主体的・対話的で深い学び」、いわゆるアクティブ・ラーニングという言葉が取り上げられました。ご著書『アクティブ・ラーニング 授業改革のマスターキー』の中でも詳しく述べられていますが、これからの授業づくりのポイントについて教えて下さい。

 新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」を通して資質・能力を育成することが求められています。ポイントは、能力育成のためにはその能力を発揮する活動が学習場面に組み込まれていなければならないということです。そのため、アクティブな学習活動が必要となるのです。さらに、何についてどのように考えさせるのか、そしてどのような知識を活用させるのかを検討しておくことが大切になります。

―評価の観点については、これまでの4観点から、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に変更されました。生徒の学びをとらえていくにあたって、どのように取り組んでいけばよいでしょうか。

 観点別評価と評定は、これまでと同様に目標準拠評価で行うことになっていますが、ポイントは、質の高い知識、有用な技能を実際に生きて働くものとして身につけているか、また、知識・技能を使いこなす能力が育っているか、学ぼうとする意欲が育っているかを把握するためにどのように評価するかです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 新学習指導要領の基本コンセプトは、コンテンツベースからコンピテンシーベースへとパラダイム転換しています。授業づくりを考える際には、パラダイム転換の本質を探ることで展望が開けると思います。本書はその手掛かりとなるものを解説しており、多くの先生方にとって有用な書となることを願っています。

(構成:及川)

コメントの受付は終了しました。