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立石:新学習指導要領への移行に備え、育成すべき資質・能力や新たな学習指導の在り方が問われています。しかし、どんな状況でも、授業を構成する要素が「子ども」と「教師」と「教材」であり、授業づくりの中核となるのが教師の教材研究にあることに変わりはありません。そして、長く教科書に掲載されている文学教材には、教材として愛される理由があります。本シリーズでは、それらを“重要教材”と位置づけ、その教材としての価値を教師自身が読み解き、子どもたちの読む力を高める実践へとつなげられるよう構成しています。
星野:「お手紙」を読むと、ほのぼのとした温かな気持ちや人物を応援したくなるような共感する気持ち、くすっと笑ってしまうユーモアを感じます。それは、「お手紙」に、がまくんとかえるくんという「魅力的な人物像」、登場人物のかえるくんが、がまくんを喜ばせようと行動する「相手を思う気持ち」、一生懸命さゆえの「ユーモア」が散りばめられているからです。「お手紙」は、低学年で扱われる教材です。子どもたちには、がまくんとかえるくんの言動から、それぞれの気持ちが物語の始めと終わりで、どのように変容したのかを考えさせたいところです。
星野:行動や会話の様子を具体的に想像させた上で、その心情を考えさせることです。かえるくんが、がまくんのために急いで家に帰り手紙を書く場面があります。子どもたちには、叙述からかえるくんが急いでいる様子を捉えさせ、「なぜ急いでいるのか」と問い、かえるくんの行動の背景にあるがまくんを思う心情を考えさせました。「気持ち」を単に問うのではなく、行動や会話の叙述から様子を想像させ、ときには経験から類推させるなどしてその心情を考えさせるようにしました。
立石:子どもたちが、他者との協働による問題解決過程の中で、知識や手続きを関連付けて概念的に身に付けたり、その有意味性を実感したりできる学習にしていく必要があります。そのためには、学習内容や指導方法について国語科教育の系統性(縦のつながり)や他教科との関連(横のつながり)を考え、教材の特性を基に、どんな読み方を身に付けさせるのかを分析する必要があるでしょう。そして、変わらず大切にしたいのは、指導者としてではなく、一人の読者として自身の読みを自覚化し、その理由を解き明かしていくことです。その教師の経験こそが、子どもたちの深い学びへのプロセスを構想するヒントとなります。
星野:「お手紙」は、人物の心情を想像しながら読むことはもちろん、会話文の多い特性を生かして音読劇や創作、紙芝居、ペープサートなど多様な単元構想が可能な教材です。その際、子どもたちの生活経験や知識も取り入れると、人物の心情をより豊かに想像することができます。
ぜひ、読み手としての視点を大切にして、「お手紙」がもつよさや魅力を子どもたちと一緒に楽しみながら、授業づくりをしていただきたいと思います。