著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
低学年は「丁寧なステップ」で段階的な成長を
ハードとソフトの視点で、小学校入門期を支える
北海道公立小学校宇野 弘恵
2017/9/12 掲載
 今回は宇野弘恵先生に、新刊『小学校低学年 学級経営すきまスキル70』について伺いました。

宇野 弘恵うの ひろえ

1969年,北海道生まれ。旭川市内小学校教諭。2002年より教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル会員。現在、理事を務める。
主な共著に、『スペシャリスト直伝! 小1担任の指導の極意』(明治図書)などがある。
『小学校低学年 生活指導すきまスキル72』も好評発売中。

―本書は、「すきまスキル」シリーズの学級経営編として、小学校低学年、高学年、中学校の3冊構成でご提案いただいています。宇野先生には「小学校低学年編」をおまとめいただいておりますが、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 本書は、「率いる」「指導する」技術をハード編として、「見守る」「寄り添う」技術をソフト編としてまとめました。最初は教師のリーダーシップを示しながらできるようにし、いずれ自分たちで学校生活が送れる力が付くような流れで構成しています。よって、単なる「指導技術のネタ本」ではなく、「段階的にどう育てていくかという視点でまとめられた書である」と自負しています。
 また、指導過程のすきまにある小さなステップを丁寧に掘り起こし、経験の浅い先生でも再現可能な技術が書かれていることもポイントです。さらに、3冊を読むことにより、発達を意識したり段階的なアプローチを試みたりすることができるのも本書の魅力の一つです。

―小学校低学年は、小学校生活のスタートでもあり、学校生活の基盤をつくる時期になります。宇野先生にはスペシャリスト直伝!シリーズで「小学校1年の学級づくり」の著書もおまとめいただいておりますが、俗に“小1プロブレム”と言われるような問題を起こさないよう、低学年担任として、まず押さえておきたいポイントはどのようなものでしょうか。

 低学年は、学校生活の基盤づくりの時期です。大人にとって当たり前のことでも、一から教えなくてはなりません。容易く見えて、なかなか手のかかる指導です。なぜなら言葉の理解が未熟な低学年にわからせるためには、「手で教える」ことが必要だからです。
 「手で教える」とは、言葉にからだ(動作)を添えて教えるということです。「姿勢を正しなさい」ではなく、「おなかを伸ばしなさい」と言っておなかに手を添える。見えないものを意識しづらい低学年に「背中ではなくおなか」を意識させ、手を添えることによって言葉とからだ(動作)をつなげるのです。
 本書にたくさん記してあるように、小学校入門期にはこのような丁寧なステップを踏んだ指導が大切です。そして、できたことを一つ一つ承認し自信を持たせることで、学校生活が楽しく意欲的になります。友達や先生のことも大好きになります。「好き」「楽しい」というプラスの感情が所属意識を高め、慣れない小学校生活に適応していこうとする原動力になるのではないかと考えます。

―小学校低学年では、先生の言葉を言った通りに受け止めてくれる、逆に言えば「染まりやすい」という部分もあると言われています。また、「言葉のとらえ」で誤解を生むこともあるようです。そのような点で、配慮すべき点があれば教えて下さい。

 高学年であれば「ものの理」を説き納得させて指導することが可能ですが、低学年にはそれができません。よって、つい「○○しなさい」という押し付けや、命令一下の力技で子どもを動かしてしまいがちです。
 こうした指導を続けていると、叱られるか否かで善悪を判断したり、「叱れるくらいなら全て教師に許可を得よう」と自ら考え判断することを放棄したりする子に育ってしまいます。ですから、教師は指示・命令だけで指導するのではなく、内面に問いかけ考えさせるような働きかけをすべきだと考えます。
 教師と子どもという立場であっても、人間としては優劣のない存在。これを常に教師は念頭に置き、自分に都合よく子どもをコントロールしていないかを日々顧みることが必要ではないでしょうか。

―低学年では、「自分のことは自分でできるように」ということを基本に指導されるかと思います。とかく、「個人主義」「個人内完結」になりがちな低学年指導ですが、これからの教育では、どのような指導が大切だと考えていますか。本書に記載されている実践例に触れながら、お教えください。

 新学習指導要領でいうところの「主体的・対話的で深い学び」が成立するためには、土壌に豊かな人間関係があることが一つの条件であると考えます。豊かな人間関係とは、自分と「違う」人とも協同して共に関わり合える関係と理解しています。
 さて、本書に「日直」の項があります。ハードでは日直の仕事をいかにスムーズに行わせるかが、ソフトには日直の仕事をすることによって「集団の中でのあり方」「責任の果たし方」「所属感」をいかに育てるかが書かれています。前者は対教師のかかわりで、後者は集団の中で生まれるという位置づけです。
 豊かな人間関係は、日常生活の中でもつくられます。低学年は「自分でできるようになること」を目指しつつも、教師は「できるようになったこと」と「社会」がどう関わっているかを意識して指導しなくてはなりません。本書には、こうした他者とのつながりを意識した指導スキルが満載です。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 「できて当たり前」のことができるようになるまでのステップを丁寧に掘り起こしました。どれも入門期における有効かつ必要なものです。どうぞお手元に置き、繰り返しお読みいただけると幸いです。

(構成:及川)

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