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本書は、「率いる」「指導する」技術をハード編として、「見守る」「寄り添う」技術をソフト編としてまとめました。最初は教師のリーダーシップを示しながらできるようにし、いずれ自分たちで学校生活が送れる力が付くような流れで構成しています。よって、単なる「指導技術のネタ本」ではなく、「段階的にどう育てていくかという視点でまとめられた書である」と自負しています。
また、指導過程のすきまにある小さなステップを丁寧に掘り起こし、経験の浅い先生でも再現可能な技術が書かれていることもポイントです。さらに、3冊を読むことにより、発達を意識したり段階的なアプローチを試みたりすることができるのも本書の魅力の一つです。
低学年は、学校生活の基盤づくりの時期です。大人にとって当たり前のことでも、一から教えなくてはなりません。容易く見えて、なかなか手のかかる指導です。なぜなら言葉の理解が未熟な低学年にわからせるためには、「手で教える」ことが必要だからです。
「手で教える」とは、言葉にからだ(動作)を添えて教えるということです。「姿勢を正しなさい」ではなく、「おなかを伸ばしなさい」と言っておなかに手を添える。見えないものを意識しづらい低学年に「背中ではなくおなか」を意識させ、手を添えることによって言葉とからだ(動作)をつなげるのです。
本書にたくさん記してあるように、小学校入門期にはこのような丁寧なステップを踏んだ指導が大切です。そして、できたことを一つ一つ承認し自信を持たせることで、学校生活が楽しく意欲的になります。友達や先生のことも大好きになります。「好き」「楽しい」というプラスの感情が所属意識を高め、慣れない小学校生活に適応していこうとする原動力になるのではないかと考えます。
高学年であれば「ものの理」を説き納得させて指導することが可能ですが、低学年にはそれができません。よって、つい「○○しなさい」という押し付けや、命令一下の力技で子どもを動かしてしまいがちです。
こうした指導を続けていると、叱られるか否かで善悪を判断したり、「叱れるくらいなら全て教師に許可を得よう」と自ら考え判断することを放棄したりする子に育ってしまいます。ですから、教師は指示・命令だけで指導するのではなく、内面に問いかけ考えさせるような働きかけをすべきだと考えます。
教師と子どもという立場であっても、人間としては優劣のない存在。これを常に教師は念頭に置き、自分に都合よく子どもをコントロールしていないかを日々顧みることが必要ではないでしょうか。
新学習指導要領でいうところの「主体的・対話的で深い学び」が成立するためには、土壌に豊かな人間関係があることが一つの条件であると考えます。豊かな人間関係とは、自分と「違う」人とも協同して共に関わり合える関係と理解しています。
さて、本書に「日直」の項があります。ハードでは日直の仕事をいかにスムーズに行わせるかが、ソフトには日直の仕事をすることによって「集団の中でのあり方」「責任の果たし方」「所属感」をいかに育てるかが書かれています。前者は対教師のかかわりで、後者は集団の中で生まれるという位置づけです。
豊かな人間関係は、日常生活の中でもつくられます。低学年は「自分でできるようになること」を目指しつつも、教師は「できるようになったこと」と「社会」がどう関わっているかを意識して指導しなくてはなりません。本書には、こうした他者とのつながりを意識した指導スキルが満載です。
「できて当たり前」のことができるようになるまでのステップを丁寧に掘り起こしました。どれも入門期における有効かつ必要なものです。どうぞお手元に置き、繰り返しお読みいただけると幸いです。