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30数名の執筆者ということで「主体的・対話的で深い学び」に対する捉え方、授業で大切にしていること、考え方なども多様です。ただ、「すべての子どもがわかる授業がしたい」「こんな力をつけたい」「子どもの眼が輝く授業がしたい」という暗黙の共通項があります。各実践事例から授業者の思いを読み取っていただき、教材の発掘や授業構成のノウハウを学んでいただければと思います。
日常生活、観光、テレビ、新聞、ネット、書籍、対話など、あらゆるものを教材と授業づくりの視点から考える選択眼でしょう。最近では、観光で入手した八ヶ岳山麓の「三分一湧水」を軸に戦国時代で扱う構想を考えています。また、新聞記事では「温暖化の島に押し寄せた波」という、ツバルの「ドメイン」である「.tv」と「地球温暖化」「グローバル化」の関係の記事を発見しました。要は、子どもの目線で、獲得させたい知識、現代の課題を見抜く教材発掘と授業構成力でしょう。
「活用力」は、そう簡単につくものではありません。いろんな授業場面で「訓練」「反復」することが必要です。“走る”ということ一つをとっても「腕振り」「モモ上げ」「踵の位置」「肩のリラックス」など、さまざまな個別の練習を通して、速く“走る”ことが可能です。個々の授業場面で、「見方」「考え方」を鍛え、その積み重ねの中で「活用力」が育成されます。
「ジグソー学習」はテーマにより「適」「不適」があります。本書では、「アメリカの貧困の背景」について4つの視点から考えていますが、各項目についてすべての子どもが意見を言える、そして答えは多様に存在することというテーマ設定で成功しています。「新潟ではなぜコメづくりが盛んか」というテーマは、「土地」「気候」「水」「社会的条件」などから分析は可能ですが、答えは1つなので有効ではありません。「江戸幕府を倒したのは誰(何)か」というテーマ設定は、「社会の変化」「外国」「坂本龍馬」などのさまざまな視点から多様に分析できるので適していると思います。
患者の命が救われ難病が治癒したときの患者や医者の喜びと、勉強が苦手な子どもたちが“楽しかった”“わかった”という喜びとは、“命”と“勉強”との違いこそあれ、底に流れる“姿勢”は同じです。本書は、研究のための書ではありません。“わからないこと”に“苦悩”し投げやりになっていた“あの子”を目に浮かべながら、すべての子どもたちが「主体的」で「対話的」な「深い」学びができるよう工夫された書籍です。