著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
多様な「主体的・対話的で深い学び」ですべての子どもが輝く授業を!
立命館大学非常勤講師河原 和之
2017/9/16 掲載

河原 和之かわはら かずゆき

1952年京都府木津町(現木津川市)生まれ。関西学院大学社会学部卒。東大阪市の中学校に三十数年勤務。東大阪市教育センター指導主事を経て、東大阪市立縄手中学校退職。現在、立命館大学、近畿大学他、7校の非常勤講師。授業のネタ研究会常任理事。経済教育学会理事。NHKわくわく授業「コンビニから社会をみる」出演。
月刊誌『社会科教育』で、「100万人が受けたい! 大人もハマる社会科授業最新ネタ」を連載中。

主な著書・編著書に、
『歴史リテラシーから考える近現代史 面白ネタ&「ウソッ」「ホント」授業』、『<活用・探究力を鍛える>「歴史人物42人+α」穴埋めエピソードワーク』『100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)『スペシャリスト直伝!中学校社会科授業成功の極意』『「本音」でつながる学級づくり 集団づくりの鉄則』『続・100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)(以上、明治図書)などがある。

―本書は、ご好評をいただいている「100万人が受けたい」シリーズのコンセプトに基づきながら、「主体的・対話的で深い学び」を実現する社会科授業モデルについて、おまとめいただいた書籍となっています。まず、本書のねらいと読み方について、教えてください。

 30数名の執筆者ということで「主体的・対話的で深い学び」に対する捉え方、授業で大切にしていること、考え方なども多様です。ただ、「すべての子どもがわかる授業がしたい」「こんな力をつけたい」「子どもの眼が輝く授業がしたい」という暗黙の共通項があります。各実践事例から授業者の思いを読み取っていただき、教材の発掘や授業構成のノウハウを学んでいただければと思います。

―主体的な学びには、子どもの「興味」をひきつける魅力的な教材が必要不可欠です。河原先生は現在も、最新の時事も取り入れた魅力的な教材を数多く作り続けておられますが、そのような「授業ネタ」開発のポイントは何でしょうか?

 日常生活、観光、テレビ、新聞、ネット、書籍、対話など、あらゆるものを教材と授業づくりの視点から考える選択眼でしょう。最近では、観光で入手した八ヶ岳山麓の「三分一湧水」を軸に戦国時代で扱う構想を考えています。また、新聞記事では「温暖化の島に押し寄せた波」という、ツバルの「ドメイン」である「.tv」と「地球温暖化」「グローバル化」の関係の記事を発見しました。要は、子どもの目線で、獲得させたい知識、現代の課題を見抜く教材発掘と授業構成力でしょう。

―本書は地理・歴史・公民の各分野に分けて、授業中の対話例も入れた具体的な授業モデルが豊富に紹介されていますが、授業モデルとあわせて「使える知識」として内面化する課題づくりの工夫も挙げられています。子どもたちが授業で学んだことを知識として「使えるもの」として、あり方を考える際や判断の材料とできるためには、授業でどのような工夫が大切でしょうか?

 「活用力」は、そう簡単につくものではありません。いろんな授業場面で「訓練」「反復」することが必要です。“走る”ということ一つをとっても「腕振り」「モモ上げ」「踵の位置」「肩のリラックス」など、さまざまな個別の練習を通して、速く“走る”ことが可能です。個々の授業場面で、「見方」「考え方」を鍛え、その積み重ねの中で「活用力」が育成されます。

―「主体的・対話的で深い学び」を実現するのに有効な一つの方法として、「ジグソー学習」が話題を集めています。本書でもジグソー学習の授業モデルが紹介されていますが、取り組みのポイントがあれば教えてください。

 「ジグソー学習」はテーマにより「適」「不適」があります。本書では、「アメリカの貧困の背景」について4つの視点から考えていますが、各項目についてすべての子どもが意見を言える、そして答えは多様に存在することというテーマ設定で成功しています。「新潟ではなぜコメづくりが盛んか」というテーマは、「土地」「気候」「水」「社会的条件」などから分析は可能ですが、答えは1つなので有効ではありません。「江戸幕府を倒したのは誰(何)か」というテーマ設定は、「社会の変化」「外国」「坂本龍馬」などのさまざまな視点から多様に分析できるので適していると思います。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 患者の命が救われ難病が治癒したときの患者や医者の喜びと、勉強が苦手な子どもたちが“楽しかった”“わかった”という喜びとは、“命”と“勉強”との違いこそあれ、底に流れる“姿勢”は同じです。本書は、研究のための書ではありません。“わからないこと”に“苦悩”し投げやりになっていた“あの子”を目に浮かべながら、すべての子どもたちが「主体的」で「対話的」な「深い」学びができるよう工夫された書籍です。

(構成:及川)

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