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「文字化資料」とは、子どもたちの話し合いの音声を文字に起こし、学習材として用いる資料です。音声言語は即時的に消えてしまいますが、文字化することによって話し合いの展開やこつが一目瞭然となります。文字化の方法としては、教師が文字化、子どもが文字化、全体を文字化、一部を文字化など、さまざまなバリエーションが考えられます。負担が少なく、かつ、効果的な方法を本書では提案しています。
そもそも国語科の役割は日常でくり広げられる無意識的な言語の運用をメタ認知し、自覚化し、日常へ返すことです。特に音声言語活動は日常性の強い言語活動です。「振り返り活動」に重点を置くことによって、自分のことばへの点検、手入れはより促され、日常の話し合いは洗練されていきます。話し合いのこつを使いこなし、創り出すようになるには「振り返り活動」が必要不可欠です。
「振り返り活動」を充実させるためには、話し合いの様相が見えていなければ事は始まりません。そのために映像資料を用いることもありますが、「文字化資料」の場合は、言語の運用に焦点化して振り返ることができます。話し合いのよさや改善点を中心に振り返っていくことによって、話し合いのこつの効果が実感できたり、こつの使い方がイメージできたりして、日常の話し合いの質が高まっていきます。
話し合いの力は、話し合いを対象化した授業だけで育まれるものではありません。他教科・他領域はもちろん、国語科内でも他の音声言語活動、読みの交流などと相互に働き掛け合いながら話し合いの力は伸びていきます。その関連性(相乗効果)を考えながら活用していただければ効果は何倍にも膨らんでいきます。
話し合いの力は、これからの教育の中心的な言語活動です。創造的・論理的な対話力は、まさに汎用的な能力と言ってよいでしょう。しかし、残念ながら話し合いの指導は、活動か、話形かに流れ、本質的な指導とはかけ離れています。ぜひ、本書を参考に指導のバリエーションを広げ、話し合いの指導に変革をもたらしていきましょう!