著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「強面」だけじゃ、生徒指導主事はやっていけない
「生徒指導」ネットワーク主宰吉田 順
2018/2/1 掲載
  • 著者インタビュー
  • 生活・生徒・進路指導
今回は吉田順先生に、新刊『実務が必ずうまくいく 生徒指導主事の仕事術 55の心得』について伺いました。

吉田 順よしだ じゅん

 1950年北海道別海町生まれ。37年間浜市内の公立小中学校に勤務。担任32年、生徒指導部長16年、学年主任13年などを兼任。平成23年定年退職。平成元年より「生徒指導」ネットワークを主宰し、「生徒指導コンサルタント」として全国の「荒れる学校」と関わる。「非行・問題行動」「荒れる学校」「学年・学級経営」などをテーマに全国各地で講演、個別の中学校の生徒指導方針づくり、教職員の教育相談、著述などの活動をしている。
 主な著書は、『その手抜きが荒れをまねく―落ち着いているときにしておく生徒指導』『新版・生徒指導24の鉄則―指導に自信を深める「考え方」の原理・原則』『荒れには必ずルールがある―間違った生徒指導が荒れる学校をつくる』『いじめ指導24の鉄則―うまくいかない指導には「わけ」がある』(以上、学事出版)、『子育て・生徒指導・学級経営に欠かせない 子どもが成長するということの真相』(民衆社)、『誰でも成功する 学級担任のための中学生の指導』『誰でも成功する 中学生の叱り方のキーポイント』(以上,学陽書房)など。

―ズバリ、生徒指導主事の仕事は「強面教師」じゃなくても大丈夫って、本当ですか!? 「生徒指導」というと、いつも大声を出して、生徒に立ち向かわなくてはならない…というイメージがつきまといますが、本当のところはどうなのでしょうか。

 もちろん大声で叱る場面もありますよ。でも、大半は面倒を見たり、普通に会話をしていることがほとんどですから、やはり生徒指導は冷静沈着な場面がほとんどなのです。しかし、冷静沈着でいられない場面では、大声で叱るしか方法がなくなってしまうのです。
 もちろん、強面教師は1人はいた方がいいのですが、冷静沈着な教師はその何倍かはいた方がよいと思います。私自身はその両方の面をもつように心がけていました。

―本書は、生徒指導主事の先生が押さえておくべき55の「心得」がひと目でわかる構成になっていますね。55の中から選んでいただくのは難しいかもしれませんが、吉田先生自身が特に「これに気づいてから生徒指導主事としての仕事が大きく変わった」という「心得」を、1つご紹介いただけますでしょうか。

 それは「心得」17の、「生徒指導は「わけ」に取り組む」です。私の若い頃は、厳しい校則指導を守らせることが生徒指導の基本でした。「服装の乱れは心の乱れ」が徹底していた時代ですから、いかに早く違反者を見つけ早く直させるかが、重要な仕事でした。このような指導では当然同じことの繰り返しになってしまい、疑問をもつようになりました。そこから、問題行動そのものではなく、「心の乱れ」こそ指導の対象ではないかと思うようになったわけです。

―生徒指導主事の最初の仕事に、目標・方針づくりがあります。目前に迫った新学期に、生徒指導主事の先生がまず押さえておくべきポイントを教えていただけますでしょうか。

 本書の「心得」で言えば、4の「現状を振り返る」と5の「振り返るにはこうする」です。事務的なことをこなすのは当然ですが、この「現状の振り返り」をしない限り、前進させることはできません。先生方が現状をどう思っているのかがばらばらでは、その後の取り組みは積み上がりません。
 ただし、1人で悩まず指導部の仲間と一緒に考えてください。

―日々の指導や問題行動への対応など、生徒指導主事の先生の忙しさは相当なものです。吉田先生が現役生徒指導主事のときに心がけていた仕事術・時間術を、1つ教えていただけますでしょうか。

 「心得」54の「私の1日の時間の使い方」に書いておきましたが、私は担任の仕事、学年主任の仕事、生徒指導部の仕事、教材研究、部活動(55歳まで)の4つが常にありましたので、それぞれの仕事を細切れにやらずに、一気にまとめてやっていました。その方が能率がいいのです。放課後学校で、平日の夜自宅で、土日の夜自宅で…というように、まとまった時間に取り掛かれるよう、仕事を分けていました。
 また、生徒指導上の問題は重なってくると大変な労力が必要になります。ですから、生徒の対応は校内のどの会議よりも最優先で、起きた問題にはできるだけその日のうちにめどをつけるようにしていました。

―ありがとうございます。最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします!

  生徒指導にはいろいろな考え方、方法がありますが、自分の頭で考えて自分が納得のいくものを積み上げるしかないのです。
 食べたものを全て栄養にする人はいないように、本書の「心得」すべてを身につけようとする必要はありません。本書が、少しでもみなさんの仕事のヒントや手がかりになればうれしいです。

(構成:小松)

コメントの受付は終了しました。