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「主体的・対話的で深い学びの実現」は「授業法の改善」ではなく、「学習者の姿の転換」によって実現されるものです。能動的に学ぶ子どもたちの育成がその目標です。短期的で断続的な学習意欲ではなく、長期的で継続的な学習意欲の向上が求められます。無気力は、やる気の出せない環境でやる気を出しても無駄だと学ぶことによって起こります。つまり長期的な学習意欲は、学級をやる気を出せる環境に設定することが求められます。それには学級づくりの質が問われるわけです。あたたかなまとまりの中で、互いの意欲を引き出し合う学級の姿が「チーム」です。そのためのガイドブックを「学級を最高のチームにする極意」として、これまで計22冊出させていただきました。教科書のない学級づくりにとって一定の役割を果たしてきたと思いますが、同時に、それぞれの書籍の役割を示すガイドブックのようなものがほしいという声もいただくようになりました。
本書は、学級づくりのうまい先生たちが実践している手順に従いながら、多岐にわたる学級づくりにおける教師の役割を整理して配置しました。皆さんの学級づくりの課題に答えるトピックがピンポイントで探せるようになっています。
物事を成功に導く人たちは、それぞれに「勝ちパターン」を持っています。しかし、ほとんどの成功者に共通する原則のようなものも存在します。本書では、その原則を示しました。
しかし、原則はそのままでは成功を保障しません。大事なことは、その原則を自分の教室に適用してみて、試行錯誤をすることです。試行錯誤の後に生まれたものが、あなたにとっての「勝ちパターン」になります。しかし、その「勝ちパターン」は永続的なものではありません。それからはずれる事態が必ず起こります。そのときにまた、原則に立ち返って勝ちパターンを修正します。本物の「勝ちパターン」は、子どもたちの事実との対話の繰り返しによってつくられていきます。
本書は、学級づくりの考え方を中心に書かれています。全ての実践は、その考え方から生まれます。方法だけ学んでもうまくいかないのは、考え方を知らないから、不測の事態に対応ができないからです。子どもたちの問題行動には「毅然と対処せよ」といっても、その「毅然と」の表現方法は多様にあります。子どもたちにマッチしない方法でそれをやろうとすると、学級を壊しかねません。しかし、抽象論だけでも教師が動けないことはよく知っています。考え方を具体的な行動に落とすポイントを「学級を最高のチームにするチャレンジ」として示しました。
「主体的・対話的で深い学び」で最も問われるのは、アクティブ・ラーニングの名前に象徴されるように、学習者である子どもたちの能動性です。子どもたちが自ら動き出すための前提条件は、安心感です。学級における安心感の醸成は、本シリーズの全てに散りばめられています。私たちは、安心が確保されたときに、チャレンジをするようにプログラムされています。その教室における安心をどのように創っていけばいいのか、そのポイントが本書、本シリーズのテーマと言っても過言ではありません。
「主体的・対話的で深い学び」の実現は、教育における国を挙げた大改革だといわれます。しかし、それを授業法の改善レベルに矮小化して捉えてしまうと、新学習指導要領は実施する前から失敗が見えています。皆さんもよくご存知のように、わが国は、急激な高齢化と人口減少で激変しています。受け身で生きるか、積極的に生きるか、それは、子どもたちの人生にかかわる問題です。子どもたちは、教師が教えたことよりも、仲間たちからの影響から学ぶのです。かわいい教え子たちに、人とつながって生きることのよさを教えるのが学級づくりです。