著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ありのままの自分でクラスづくり
小野 領一
2018/2/23 掲載
今回は小野 領一先生に、新刊『学級崩壊崖っぷちでも乗り切れる!頑張らないクラスづくりのコツ』について伺いました。

小野 領一おの りょういち

1984年奈良県生まれ。
近畿大学経営学部卒業後,大阪教育大学第二部に進学し,卒業。
現在,奈良県小学校教諭として勤務。教育サークル「かれ笑らいす」代表。
「困難な学級での学級マネージメント」と「力量のある教員の指導方法に共通項はあるのか?」といったことについて,研究を行っている。
ストレス発散方法は,コカ・コーラ ゼロを一気飲みすること。

―小野先生は、初任の頃から難しいクラスを持ち続け、結構、追い込まれてきたそうですね?

 どんな学級の子どもでも、学級開きからの最初の3日間は騒がずに先生の言うことを聞き、指導がしやすい時期だと言われています。このことから、学級開きから最初の3日間を1年間の中でも特に大切な時期だとして、『黄金の3日間』と呼ばれています。
 でも、ボクが担任した学級は、そもそも『黄金の3日間』が存在しない学級もあって、初日から追い込まれまくっていました…(笑)

 教室に置いてあったボクの私物が隠されていたり、壊されていたり…。
 教室に入ると子どもたちがガムを食べていたり…。
 初日の最初の時間からエスケープをしている子どもたちがいたり…。

 とにかく、初日からあり得ないことが多すぎて、これから1年間どうすればよいのか、途方に暮れたことも多くありました。
 

―フッと肩の力を抜いて、ありのままのクラスづくりを始められたきっかけは何ですか?

 以前のボクは、ダメなことはダメだと子どもたちに厳しく言い聞かせ、徹底的にやらせ切ることで、子どもたちをまっすぐ育てていきたいと考えていました。
 でもある時、やんちゃな子どもに厳しく指導をしたのですが、机を蹴り飛ばして、食って掛かられたことがありました。
 なめられてはダメだと思い、その時は徹底的に子どもを押さえつけようとしたのですが、結局、その子どもは教室から飛び出してしまい、うまく指導することができませんでした。その後、打つ手がなくなってしまったボクは、押さえつけるのではなく、子どもの話を聞き、ボクの素直な気持ちを伝えました。すると驚いたことに、その子どもが落ち着いてボクの話を聞いてくれたのです。
さらにそれだけではなく、このことがあってから、子どもの様子も少しずついい方向に変わっていったのです。
 この経験がきっかけとなり、フッと肩の力を抜くことの大切さを感じるようになりました。

―本書では「頑張らない」でも先生らしいクラスづくりの秘訣をたくさん紹介いただきましたが、その中から1つ先生がここぞと思うものを紹介いただけませんか。

 指導のスルーです。
 やんちゃな子どもが多く在籍する学級を担任したときは、このスキルが必須だと思います。
 ここで、気を付けなければいけないのが、指導のスルーというのは指導をしないのではなく、指導の深追いをしないということです。
 食って掛かってくる子どもと対峙しても、子どもから見れば、それは大人と子どもの大人気ない喧嘩に見えてしまっていることが多く、クラスの子どもたちも辟易してしまい、クラスのムードが一気に悪くなってしまいます。
 例え、その時、食って掛かってきた子どもを押さえつけられたとしても、本質的な解決には繋がらず、逆にその子どもとの遺恨が残ってしまいます。遺恨が残ってしまうと、いつ何時大爆発するかわかりません。
 だからこそ、指導のスルーをしながら、少しずつ少しずつダメなことはダメだと丁寧に伝え続けなければいけない、とボクは考えています

―先生は思い詰めず、教師を続けていくために、頑張らないことを頑張ろうとされているのかな、と感じるのですが、そんな先生でもやはり、職場で失敗したなーとか、つらいなーということがないわけではないと思います。そんな時、どんなふうに気持ちをあげていかれますか?

 ボクはしんどいことや失敗を受け止めて、笑い話に変えていました。
 ボク自身不器用な人間なので、毎年のように、失敗やつらいことがありました。でもその都度、先輩教師や友だちにそのことを自虐的に伝え、笑いに変えていました。そうすると、すっと気持ちが楽になって、実はちっぽけなことで悩んでたんだなーってことに気付くことも多かったです。 

―今、まさに壁にぶつかっている先生方にメッセージとエールをお願いいたします。

 つらい時や苦しい時は必ずあります。
 ボクもそうだったんですが、いつの間にか「こうあるべきだ」と勝手に思い込んで、それが出来ていない自分を責めてしまって、どんどん自分で自分を追い込んでしまっていたんですね。だからこそ、苦しい時は、肩の力を抜いて頑張り過ぎないことが大切だと考えています。
 そのヒントとなるように、『頑張らないクラスづくりのコツ』を書かせていただきました。壁にぶつかっている先生方にこの本を読んで頂き、壁を乗り越えられる一助に少しでもなってもらえれば幸いです。これから、一緒に頑張っていきましょう!!

(構成:佐藤)
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