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私自身の経験から、教育現場に出てすぐの1年目の教師と、ある程度現場のことが分かるようになってきた3年目の教師とでは、意識したり、力を入れて取り組んだりすべきことが違う、という実感があるからです。例えば、1年目の教師に「とにかく良い授業を!」というアドバイスをしてもそれは難しいものがあります。一方、3年目の教師に対して本書に書いてあるような初任者に向けたアドバイスをし続けるのも、それはそれで成長を妨げることがあると思います。つまり、それぞれのステージに合った「アドバイス」や「コツ」、「成長のヒント」があるのです。
そして、現代の難しい教育現場において、初任者は「とにかく、子どもとの信頼関係を築き、安定した学級を運営する事を最優先にしつつ、授業実践に精一杯力を入れていく」という方向での努力が最も奏功すると考えます。そのための具体的な「アドバイス」や「コツ」を本書にまとめました。全て初任者が理解でき、取り組めることばかりです。なぜなら、それらは私が初任者時代に意識していたことだからです。「教科書」というのは少々大げさかもしれませんが(笑)、初任者の先生にとって、本書は大きな武器になると思いますよ!
初任時代にはとにかく失敗しましたよ。だから、その失敗から学んだことをたくさん本書にはまとめてあります。「あのとき知っておけば……」というのは、たくさんありますが、特に、「指示は的確に短く」ということですかね。大学院時代に、国語科教育の指導などについて研究していた私は、「指示」についてそんなに真剣に考えたことがありませんでした。しかし、教職経験を積んだ今、その重要性を痛感しています。そもそも、「このように話そう」という意識すら持たずに子どもの前に立って話してしまっていたなぁと反省しています。それでも意識し始めてからは、だいぶ上手になったと思います。本書の一番初めの項に書きましたが、何事も「無知を知る」ことから始まるのですね。そう言う意味では、「無知を知る」ということが「あのとき知っておけば……」ということかもしれません。
そうなんです。大学のゼミの後輩に手伝っていただき、初任者の先生方にどんなことで困っているか、アンケートを取りました。あくまでも私が個人的に調べた結果ですが、その中で多くの初任者が「帰宅時間の遅さ」と「特別な支援を要する児童への対応」と「管理職との関係」で主に悩んでいることが分かりました。「授業」で悩んでいる初任者は少ない状況でした。そこまで手や頭が回らないという感じだと思います。自分自身の経験から考えると、おそらく、「授業がうまくいっていない」という状況に気づいてすらない状況だと思います。それはさておき、アンケート結果を踏まえて、「帰宅時間を早める方法」「特別支援」「管理職」などに関しては、全て本書に載せてあります。いずれも初任者でも取り組めることなのでおススメですよ。
本書は、意識して「網羅的」に書きました。先ほど挙げたように、初任者の悩みは多岐に渡るからです。教師の一番の仕事は授業をして子どもの力を伸ばすことですが、それ以外のことでも多くの初任者が悩んでいるのです。そのような状況を受けて、たくさんの先生方の助けになるよう、網羅的に書きました。その中でもあえて重要なことを選ぶとしたら、「学級経営編」です。なぜかというと、現場が求めるのは「一年間クラスを保てる先生」だからです。これは、私が初任のときの校長が何度も口にしていたことです。逆に言うと、これができないとかなり教員人生が苦しくなります。また、余裕のあるときは、「自己研鑽編」に紹介したことを実行してみてください。実はそれが「活躍」だけでなく、「楽しみ」に繋がるのです。
「これからの、先生の素晴らしいであろう教員人生の第一歩を共にできたこと。息子共々私は幸せです。」
この言葉は、私が初任の年度の最後の保護者会で保護者にかけて頂いたお言葉です。前年度学級崩壊していた学年を受け持ち、本書に書いてあることの多くを実践しました。
私も皆さんと同じく、若手教師です。毎日毎日失敗ばかりですが、それでもこの仕事を心から楽しんでいます。自分の頑張りが、こんなにも人から感謝される……みなさんが選んだ仕事は、最高の仕事ですよ! 本書をみなさんの武器の一つにしていただき、素晴らしい「教員人生の第一歩」を踏み出してください。