子供の記述を見取って「特別の教科 道徳」の評価をしよう
2018/3/8 掲載
- 著者インタビュー
- 道徳
今回は、服部敬一先生に新刊『道徳科授業サポートBOOKS 小学校「特別の教科 道徳」の授業と評価 実践ガイド』について伺いました。
―先生は、道徳を専門に研究会や学校でご実践を積んでこられたまさに“道徳プロ”でいらっしゃいますが、道徳が「特別の教科」となったことをどうとらえていらっしゃいますか?
教科だからと言って、子供にとって分かりきった道徳的価値を教え込んだり、「このようにすべきだ」と善行を目指させたりしてはいけないと考えています。そんなことで子供は善くならないし、善を行えるようにもならないと考えます。それよりも、「なぜ善いのか」といった道徳的価値の意味や、弱さとよりよく生きたいという願いを併せもった人間というものについての理解を深める授業をすべきであると考えます。そのことが、生きることへの考えを深め、善悪を単純に捉えるのではなく、しっかりと考えることができる力を養うことに繋がると考えます。
―教科となったからには評価がついてきます。本書にも書かれていることですが、簡単に…先生はどう評価をすべき、とお考えでしょうか?
子供の道徳性を評価するのではなく、また、日常における子供の道徳的な姿を評価するのでもありません。評価は、「特別の教科 道徳」における学習状況や道徳性にかかわる成長の様子について把握して行われなければなりません。そのためには、教師は「特別の教科 道徳」の授業における子どもの成長や期待する変容を見る観点を明確にもつ必要があります。つまり、この授業で、この教材で、子供はどんなことに気づいたり、わかったり、納得したりできるのか、そういう視点もなく、いくら子供を見ても学習状況も成長も見ることは困難なのです。
―本書は授業と評価を取り上げてくださっていますが、低学年でどんな教材を取り上げられていますか?
下記をとりあげています。ご覧いただいてわかるように教科書にも多く掲載されている定番と言われる教材です。
教材名 | 概 要 |
---|---|
かぼちゃの つる | まわりの注意も聞かず、人の畑や道までもつるを勝手にのばしていったかぼちゃはトラックにつるを切られて痛い思いをする。 |
きんの おの | 大切なおのを池に落としてしまった木こりは、神様から金のおのを見せられても、銀のおのを見せられても自分のではないと言う。感心した神様は金のおのも銀のおのも木こりに与える。それの話を聞いたとなりの男は? |
はしの うえの おおかみ |
谷川に架かる一本橋。おおかみはそこで自分よりも弱い動物に通せんぼをして大いばり「えへん。へん。」ある日、くまに親切にしてもらったのをきっかけに、うさぎに親切にしてみると…… |
およげない りすさん |
なかよしのあひる、かめ、はくちょう、りすですが、ある日、池の中の島に遊びに行くことになり、泳げないりすをおいて行った。しかし、3人で遊んでも楽しくない。次の日、りすをかめの背中に乗せて4人で島へ渡った。 |
きいろい ベンチ | 雨上がりの公園で紙飛行機を飛ばす二人。少しでも遠くへ飛ばそうとベンチの上に上がる。しばらくして、小さな女の子が公園にやってきて泥だらけになったベンチに座ってしまう。二人は、「はっ」として顔を見合わせる。 |
ハムスターの あかちゃん |
ハムスターの母親が赤ちゃんを大切に育てている様子が描かれている。「毛が生えていない」「目もあいていない」から「せ中のもようが分かる」「あくびをする」など赤ちゃんの具体的な成長の様子も描かれている。 |
―中学年ではいかがでしょうか?
下記、同様に定番の教材です。
教材名 | 概 要 |
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新次のしょうぎ | 新次は、おかし屋の伊三郎おじさんと将棋をしているときに不正をする。その結果、将棋には勝つが、新次はうれしいどころか、涙を流しながら家に帰る。 |
どんどん橋の できごと |
学校からの帰り道、水量が増した川にいろいろな物を投げ込んで遊んでいる子供たち。そのうちに傘を入れる遊びへと発展する。正は「いやだ。」と断るが、ぼくはその場の雰囲気に流されて自分の傘を投げ込んでしまう。 |
絵はがきと切手 | 転校していった友達が送ってくれたきれいな絵はがき。でも、定形外郵便物なので料金が不足していました。このことを相手に伝えるべきか、お礼だけを書くべきか迷う主人公です。 |
言葉のまほう | 新しいゲームを買って店から飛び出した主人公。店先でぶつかった相手に怒鳴ってしまい、楽しい気持ちがだいなしになったと感じる。次に日は、スーパーでぶつかった相手の子が「ごめんね。大丈夫。」と言ってくれた。 |
雨のバス停留所で | 雨の日にバス停留所近くの軒下で、順番に並んで雨宿りをする人たちの後ろによし子たちも並ぶが、バスが近づいて来るのを見つけたよし子は他人のことを考えず、一番にバスに乗ろうとする。 |
ブラッドレーの せいきゅう書 |
ブラッドレーはお母さんに、おつかいやお掃除代などの請求書をわたす。お昼に、ブラッドレーは請求したお金と、お母さんからの0ドルと書かれた請求書を受け取る。請求書をみたブラッドレーの目は涙で一杯になる |
ヒキガエルとロバ | 雨上がりの畑道、ヒキガエルに石を投げ当て遊んでいる少年達。その場を通りかかったロバの荷車にヒキガエルがひかれることを期待して見ていたが、ロバは主人のむちに耐えながら必死にカエルをひかないようにコースを変えた。 |
―では、高学年ではいかがでしょうか?
下記です。ぜひ多くの先生に手にとっていただけたらです。
教材名 | 概 要 |
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手品師 | 腕はよいが売れない手品師が、ある日街角で出会った一人の少年を手品で自分も元気づける。明日も来ると約束したその夜、大劇場に立つチャンスが舞い込み、悩む手品師。手品師が最後に出した結論は? |
うばわれた自由 | ダダーン!夜明け前の森に響く銃声。森番のガリューが見つけた男は、その国の王子ジェラールだった。ジェラールはガリューを牢屋に入れ、その後のやりたい放題。次第に国は乱れ、とうとうジェラールも牢屋に…… |
ロレンゾの友達 | ロレンゾから3人の友だちに20年ぶりに連絡が入る。しかし、ロレンゾが警察に追われているという噂があり、それにとまどう3人。結局、ロレンゾは罪を犯していなかったのだが…… |
ブランコ乗りと ピエロ |
サーカス団のリーダーであるピエロは他のサーカス団から招かれてきたブランコ乗りのサムのことが気に入らない。ピエロには、サムが自分勝手で、いつも自分だけが目立ちたいように見えている。 |
名前のない手紙 | ある日突然クラスの友だちから口をきいてもらえなくなった私。仲間はずれにされる日々は息の詰まるような辛い毎日である。そんなときに、匿名の手紙が「私」の筆箱に入っているのを見つける。 |
くもの糸 | おしゃかさまが天上から垂らしてくださったくもの糸。カンダタは地獄から抜け出そうと必死に登る。うしろからのぼってくる罪人たちに「このくもの糸はおれのものだぞ。おりろ。おりろ。」とわめいた瞬間、くもの糸は切れてしまう。 |
(構成:佐藤)
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