著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
社会科研究者による「新内容」「新教材」の指南書
国士舘大学教授北 俊夫
2018/3/13 掲載
 今回は北 俊夫先生に、新刊『小学校社会科「新内容・新教材」指導アイデア』について伺いました。

北 俊夫きた としお

福井県に生まれる。
東京都公立小学校教員、東京都教育委員会指導主事、文部省(現文部科学省)初等中等教育局教科調査官、岐阜大学教授を経て、現在国士舘大学教授。
主な著書に、『「思考力・判断力・表現力」を鍛える新社会科の指導と評価』『“知識の構造図”を生かす問題解決的な授業づくり』(明治図書)などがある。

―本書は、平成29年版学習指導要領「社会」で示された「新しい内容」「新しい教材」の指導アイデアをおまとめいただいた書籍ですが、まずこの書籍のねらいと読み方について教えて下さい。

 新学習指導要領では、目標と内容の示され方が大きく変わりましたが、それとともに、社会科においては新しい内容や教材が追加されたり一部改められたりしました。本書は、新学習指導要領に示された「新内容」「新教材」に焦点を当てて、指導のアイデアやヒントを示したものです。また、学校現場の状況を熟知している社会科の研究者によって執筆されており、学校や教師に対するメッセージにもなっています。

―新学習指導要領「社会」における新内容・新教材は、現代的な教育課題に対応して、伝統や文化に対する教育、自然災害から身を守る防災教育、政治に対する関心を高める教育の重要性なども指摘されていますが、この変化をどうとらえ、どのように授業化していけばよいのでしょうか。

 本書の1章では、内容論、方法論の観点から新社会科の課題を解説しています。これを受けて、2章では、各学年の「新内容」「新教材」に焦点を当てて、指導のアイデアやヒントが解説されています。まず、1章を読んでいただいたあと、2章に紹介されているご自分の関心のある、あるいは授業づくりに取り組みたいテーマを選んで読み解いていく方法があります。また、全体を読み通すことによって、今回の学習指導要領の課題を概観することができます。

―本書では、新内容・新教材の授業づくりについて、@「見方・考え方」の働かせ方A「主体的・対話的で深い学び」を実現する手だてB「カリキュラム・マネジメント」のヒントC指導展開例の切り口で解説いただいています。@の「見方・考え方」、Aの「主体的・対話的で深い学び」は、今回の改訂のキーワードとも言えるものですが、これまでの授業づくりとの違い、これから取り組むべきポイントについて教えて下さい。

 新学習指導要領は、さまざまな新しい教育課題にも対応しています。それに伴って、新内容や新教材が示されました。社会科は社会を対象に学ぶ教科ですから、社会の変化に伴って内容や教材が変化するのは、社会科の宿命だともいえます。本書では、こうした教育課題に対応した授業づくりについても紹介しています。

―Q3で挙げられた@「見方・考え方」A「主体的・対話的で深い学び」を鍵とした授業づくりにおいては、“評価”も重要なポイントになってきそうです。これからの評価・フィードバックについては、どのように考えていけばよいでしょうか?

 新しい用語が登場すると、つい目新しさが重視されますが、何事にも「不易と流行」があります。これらは、社会科の授業においてまったく新しい課題ではありません。これまでも精力的に取り組んできたものです。浮足立つ必要はありません。ただ、これまで重視してきた大切なことは何か。改善しなければならないところはどこかを確認し、よりよい授業づくりを進めることがポイントです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 授業において指導と評価は一体ですから、学習指導要領が示された段階で、学習評価の考え方についても示されると良かったのですが、本書の執筆の時点では、新学習指導要領における学習評価の考え方や方向性について明確な方針が示されていませんでした。学習評価の目的や基本的な考え方はこれからも変わらないと思いますが、新しい方向性や評価の観点、評価方法が示された段階で、学習評価に焦点を当てた新たな提案をしようと考えています。

(構成:及川)
コメントの受付は終了しました。