- 著者インタビュー
- 学習指導要領・教育課程
「量的確保と質的転換」という言葉があります。まずは、「量的確保」です。そこで、年間指導計画にしたがって、毎週、道徳科授業を行うことを楽しみましょう。楽しみ方の基本は、二つです。一つは、本年度から使用が始まった教科書にしっかり目を通して、教師自身が道徳的価値について思いを巡らせることです。もう一つは、教材の理解や活用の仕方について教師同士で意見を交わすことです。双方を日常的に行うことで楽しい道徳科授業の基盤ができると考えます。
目標にも書かれている「物事を多面的・多角的に考える」ことができる授業が「考え、議論する道徳」の基本です。そのために参考となるのが、文部科学省が例示している「読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習」「問題解決的な学習」「道徳的行為に関する体験的な学習」です。これらは、指導の型を示しているわけではありませんから、それぞれのよさを組み合わせながら、よりよい授業をつくり出していくのがよいでしょう。
最も重要なのは、道徳科における子どもの学習状況を評価するということです。一つは、児童が道徳的価値やそれらに関わる諸事象について他者の考えや議論にふれながら、児童が自律的に思考する中で、一面的な見方から多面的・多角的な見方へと発展しているかを評価します。もう一つは、道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかを評価します。「多面的・多角的な見方」「自分自身との関わり」の二つがキーワードです。
自分自身が道徳授業づくりで大切にしていることは、児童と一緒に考える、ということです。児童へ発問する事柄は、大人である教師にとっても考える価値のある内容です。ですから、児童の発言にはっとさせられ、学ばされることもあります。学校経営上で大切にしていることは、道徳科の学びが、多くの学校で目標とされている道徳的な側面(例えば、優しい子とか、温かい子などの児童像)に大きな役割を担っているということです。道徳科をしっかり行うことは、学校づくりの基盤だと考えます。
繰り返しになりますが、道徳科の授業を児童と一緒に楽しむことが一番です。わかりきったことを尋ねるのではなく、教師自身も考えたくなるような発問をして、共に学ぶことがよいと考えます。この本を読んで、それを一層促進してください。