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「考え、議論する道徳」を行おうと「問題解決的な学習」にチャレンジしても、なかなかうまくいかないことがあります。それは、子どもの「主体的・対話的で深い学び」を促すための、当意即妙な発問ができていないためです。
そこで本書では、教師が道徳科で「問題解決的な学習」をするうえで有効活用できるキー発問を50精選し、その実践例とともに提示しました。本書を熟読して実践していただければ、より楽しくて充実した「問題解決的な学習」を展開できるようになります。
「何が問題になっているのか?」「自分ならどうするか?」を問うことで問題を発見し、その解決に取り組む学習が成り立ちます。こうした問題の根本をとらえ、主体的に判断するよう促す発問が、授業の骨格をつくります。
また、「相手の立場ならどうするか?」と他者の立場を考慮したり、「別の場面でも応用できるか?」と汎用性を吟味したりする発問もおすすめです。多面的・多角的な発問こそが、子どもの視野を広め、深く啓発していきます。
「問題解決的な学習」では、子どもは自由な発想で多様な意見を出すものです。そういうときは、子どもの意見を共感的に理解し、柔軟かつ即興的に授業展開を組み立て直すことが大事になります。
「どうしてそう思うの?」(理由・根拠)、「そうしたら、どうなるだろう?」(結果の予想)、「それで皆が幸せになれるか?」(互恵性)などのキー発問を適宜取り入れると、確実に収斂していきますので大丈夫です。想定問答との違いを楽しみつつ、納得できるまでとことん話し合いたいものです。
道徳科では、口先だけの意見表明で終わらず、自己の生き方や人間としての生き方を根本から追究し、生きる指針を洞察する「深い学び」とすることが大切です。
そのためには、子ども自身が問題を自分事としてとらえ、「現状はどうなっているのか?」と分析したり、「本当にそれでいいのか?」と批判したり、「本当ならどうしたいのか?」と本心で考えたりすることが有効です。こうしたキー発問は道徳教育全体とも響き合わせ、実効性を高めたいところです。
問題解決的な発問を取り入れることで、道徳科は楽しくてためになる授業へと質的転換します。発問が変わることで、授業の形態がアクティブになり、子どもたちの反応もポジティブに変わっていきます。
ぜひ、本書で示したキー発問50や実践例を参考にして、使えそうな発問からどんどん気楽に取り入れて、クリエイティブな授業改善にお役立てください。まずは、先生方ご自身が道徳的な問答を楽しみながら、子どもたちと一緒に問題解決にチャレンジしていただきたいです。